発熱が3週間以上続くにもかかわらず、原因が特定で来ない不明熱(Fevor of unknown origin;FUO)。しかし、診断法はいまだ確立されていない。米・Johns Hopkins University School of MedicineのWilliam F. Wright氏らは、構造化された診断法および構造化されていない診断法の有用性を比較した前向き研究19件について、システマチックレビューおよびメタ解析を実施。両診断法に有意差は見られず、世界保健機関(WHO)の6地域間で診断率にばらつきがあったことから、同氏らは「不明熱の評価に地理的な有病率を取り入れるべき」とJAMA Netw Open2022; 5: e2215000)に報告した。

診断定義の違い、最小限の診断手順の使用、地域などが診断精度に影響

 PetersdorfとBeesonは、1961年に「①発熱が3週間以上持続、②38.5℃以上の発熱が少なくとも3回見られる、③入院1週間の精査でも原因不明」という不明熱の分類基準を初めて提唱したものの、「日常的な臨床検査や構造化された診断プロトコルを用いるべきでない」とした。一方、de Kleijnらは、病歴、検査所見、既存の診断データから不明熱診断の手がかりが得られない場合、特に段階的な構造化診断を提唱している(Medicine 1997; 76: 392-400)。

 しかし近年の報告によると、集中的に不明熱を評価しているにもかかわらず、8.5~51.0%は診断が付かないという(BMC Infect Dis 2019; 19: 653)。

 不明熱の診断精度に影響を及ぼす要因として、診断定義の違い、最小限の診断手順の使用、診断する地域などが考えられる。

 いずれにせよ、構造化された診断法と構造化されていない診断法を比較検討した研究は少ないことから、Wright氏らは今回、システマチックレビューおよびメタ解析を行い、両診断法の有用性を検討した。

西欧州で診断率が有意に低い

 Wright氏らは、医学データベースPubMed、EMBASE、Scopus、Web of Scienceから不明熱、古典的不明熱(Pyrexia of unknown origin;PUO)、臨床試験、前向き研究などの用語をキーワードとして1997年1月1日~2021年3月31日までに掲載された論文を検索。前向き研究19件・2,627例(患者年齢範囲10~94歳、女性21.0~55.3%)を抽出し、主要評価項目を不明熱の診断率としてメタ解析した。

 なお、解析対象のうち感染症は11.7~58.6%、非感染性の炎症性疾患は6.0~34%、がんは2.9〜30.1%に認められ、未診断例(範囲6.9~50.7%)は17件で報告された。  

 不明熱の診断にPeterdorfとBeesonの基準を用いていたのは9件・1,228例(46.7%)、DurackとStreetの基準(入院精査が1週間から3日に短縮)は7件・1,135例(43.2%)、いずれかを用いていたのは3件・264例(10.0%)だった。

 解析の結果、構造化されていない診断法と比べ構造化された診断法の使用は、診断率が高い傾向にあったが有意差は認められなかった〔オッズ比(OR)0.98、95%CI 0.65~1.49〕。

 また世界保健機関(WHO)の6地域のうち、西欧(ベルギー、フランス、オランダ、スペイン)と東欧(トルコ、ルーマニア)で比較したところ、同様に有意差は示されなかった(OR 0.83、95%CI 0.41~1.69)。

 他のWHO地域に比べ、西欧では不明熱の診断率が有意に低かった。不明熱の主な原因疾患を見ると、東南アジアでは感染症(49.0%)、西太平洋では非感染性慢性炎症性疾患(34.0%)、東地中海では腫瘍(24.0%)が挙げられた。

 以上の結果を踏まえ、Wright氏らは「WHOの6地域ごとに不明熱の診断率は異なっていた。いずれの前向き研究とも、構造化されていない診断法との比較において構造化された診断法の導入を支持するものではなかった」と結論。「世界の臨床医は、不明熱患者の評価に地理的な疾患の有病率を考慮すべきである」と考察している。

(田上玲子)