米・Cleveland ClinicのAli Aminian氏らは、米国で肥満に対する減量手術を受けた約5,000例と受けていない約2万5,000例で、がんリスクと死亡率を比較。減量手術が肥満関連のがんおよびがん関連死亡率を有意に低下させたことをJAMA(2022年6月3日オンライン版)に報告した。
手術群5,000例超に5倍の非手術患者をマッチング
肥満は一部のがんの発症とがん関連死亡率を上昇させるが、意図的な体重減少によりこうしたリスクが低下するか否かは明らかでない。これは、がんの発症率が比較的低く、体重減少からがん発症までタイムラグがあることに加え、多くの肥満者はライフスタイル改善だけで大幅な体重減少を維持できないため、検出力の高いランダム化比較試験による十分な追跡が困難であることに起因する。
減量手術では一般的に20~35kgの減量を達成し、数年に渡り維持することが可能である。がんリスク低下との関連を示した観察研究も少数ながら報告されているが、がん関連死亡率への影響や術式による差は検討されていなかった。
今回の検討は、2004年1月~17年12月に米国で減量手術(Roux-en-Y胃バイパス術またはスリーブ状胃切除術)を受けたBMI 35以上の肥満成人5,053例に対し、背景が一致する通常ケアを受けた患者(対照群2万5,265例)を1:5の比率でマッチングして後ろ向きに観察するコホート研究。多変量Cox回帰分析を用いて、肥満関連の13種のがん※ の発症率とがん関連死亡率を比較した。
肥満関連がんリスク32%、がん死リスク48%低下
合計3万318例(女性77%、白人73%)の年齢は46歳、BMIは45(いずれも中央値)だった。
10年後の両群間の平均体重差は24.8kg(95%CI 24.6~25.1kg)で、手術群では非手術群と比べ平均19.2%(95%CI 19.1~19.4%)減少率が大きかった。
中央値6.1年〔四分位範囲(IQR)3.8~8.9年〕の追跡期間中に、手術群の96例、非手術群の780例で肥満関連のがんが見つかった。1,000人・年当たりの発生率は、手術群が3.0例、非手術群が4.6例だった。
肥満関連がんの10年累積発生率は、非手術群の4.9%(95%CI 4.5〜5.3%)に対して手術群では2.9%(同2.2〜3.6%)で32%のリスク低下、絶対リスク差は2.0%〔95%CI 1.2〜2.7%、調整ハザード比(HR)0.68、95%CI 0.53〜0.87、P=0.002)だった。
がん関連の死亡は、手術群が21例(1,000人・年当たり0.6例)、非手術群が205例(同1.2例)だった。
がん関連の累積死亡率は、非手術群の1.4%(95%CI 1.1〜1.6%)に対して手術群では0.8%(同 0.4〜1.2%)で48%のリスク低下、絶対リスク差は0.6%(95%CI 0.1〜1.0%、調整HR 0.52、95%CI 0.31〜0.88、P=0.01)だった。
Aminian氏らは「肥満成人において、減量手術は非手術との比較で肥満関連のがん発生率およびがん関連死亡率の有意な低下と関連していた」と結論している。また、術式による差はなかったことから、同氏らは「手術による解剖学的変化に関連した生理学的な変化ではなく、体重減少そのものが、肥満関連がんリスク低下のおもな機序かもしれない」と考察している。
(小路浩史)