前立腺がんは、日米とも罹患数の多いがんである。米・Loma Linda UniversityのMichael J. Orlich氏らは、2万8,000例超を対象に乳製品の摂取と前立腺がんの発症リスクとの関連を検討する前向きコホート研究を実施。その結果、乳製品の1日当たりの摂取量が少ない男性に比べ、多い男性では前立腺がんの発症リスクが1.27倍であることが示されたと、Am J Clin Nutr2022年6月8日オンライン版)に発表した。

リスクは乳製品ゼロ摂取群の1.62倍

 乳製品の摂取や食事からのカルシウム(Ca)摂取は前立腺がんの発症に関連すると指摘されているが、不明点もある。そこでOrlich氏らは今回、米国またはカナダの男性2万8,737例を対象に、乳製品の摂取や乳製品以外からのCa摂取と前立腺がん発症との関連を検討するコホート研究を実施した。食事調査には食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた。

 主要評価項目は前立腺がんの発症で、副次評価項目はがん進行度別の前立腺がん発症とした。前立腺がんの発症は、州のがん登録と連携しているコンピュータ支援記録で特定した。

 平均追跡期間7.8年間で、1,254例が前立腺がんを発症。うち190例は進行性(局所進行、転移、グリソンスコア4+3以上)だった。

 年齢、人種、教育歴、運動習慣、前立腺がんの家族歴、良性前立腺肥大症の既往、前立腺がんスクリーニング検査の受検、過去1年以内の糖尿病治療歴、摂取カロリーを調整して解析したところ、1日当たりの乳製品摂取量が10パーセンタイルの低摂取群(20.2g/日)に比べ、90パーセンタイルの高摂取群(430g/日)では、前立腺がんの発症リスクが1.27倍だった〔ハザード比(HR)1.27、95%CI 1.12~1.43、P=0.0001〕。

 動物性食品を一切取らないビーガン食の男性を除いた解析でも、乳製品低摂取群に比べ、高摂取群で前立腺がんの発症リスクが有意に高かった(HR 1.22、同1.03~1.43、P=0.018)。

 ビーガン食の男性を乳製品ゼロ摂取群として解析したところ、前立腺がんの発症リスクは乳製品高摂取群で有意に高かった(HR 1.62、95%CI 1.26~2.05、P=0.0001)。

乳製品に含まれるカルシウム以外が関与か

 前立腺がんの進行度別に同様の解析を行ったところ、進行性、非進行性のいずれも、乳製品の摂取量10パーセンタイル群に比べ、90パーセンタイル群で前立腺がんの発症リスクが有意に高かった(進行性:HR 1.38、95%CI 1.02~1.88、P=0.039、非進行性:HR 1.27、同1.11~1.45、P=0.0004)。

 275例を対象にFFQの誤差を調整した上で多変量解析を行ったところ、乳製品の摂取量が少ない群(11g/日)に比べ、多い群(291g/日)で前立腺がんの発症リスクが有意に高かった(HR 1.75、95%CI 1.32~2.32、P=0.00059)。

 一方、乳製品以外でのCa摂取量と前立腺がん発症との関連について、イソフラボン、α-トコフェロール、食物繊維、α-リノレン酸、リコピンの摂取量を加味した上で解析したところ、乳製品以外でのCa摂取量が少ない10パーセンタイル群(349mg/日)と多い90パーセンタイル群(905mg/日)の間には、前立腺がん発症リスクの上昇における有意な関連は認められなかった(HR 1.16、95%CI 0.94~1.44、P=0.17)。

 以上から、Orlich氏らは「乳製品の摂取量が多い男性は、前立腺がんの発症リスクが高い」とした上で、「ただし、乳製品以外でのCa摂取ではリスク上昇との関連は認められなかったことから、乳製品に含まれるCa以外の成分が前立腺がんの発症リスクに関与していると考えられる」と結論している。

(比企野綾子)