1型糖尿病患者におけるオープンソース自動インスリン送達(AID)システムの使用が安全、有効であることが示された。ニュージーランド・University of OtagoのMartin de Bock氏らは、1型糖尿病患者を対象にオープンソースAIDシステムとセンサー付きインスリンポンプ療法(SAPT)システムの安全性と有効性を比較する初の多施設ランダム化比較試験(RCT)CREATEを実施。その結果を第82回米国糖尿病学会(ADA 2022、6月3~7日)で発表した。
自動的にインスリン送達を調整
SAPTは持続グルコースモニター(CGM)を搭載したインスリンポンプ療法システムで、インスリンポンプとCGMを装着しCGMの値を常にインスリンポンプ画面に表示することができる。一方、オープンソースAIDは、CGM+インスリンポンプ(SAPT)に加え、5分ごとにインスリン送達を自動的に調整して血糖値を目標範囲内に維持するアルゴリズムを組み合わせたシステムで、糖尿病患者の負担を軽減するために糖尿病患者によって開発された。このアルゴリズムはオープンに共有されているため一般にオープンソースと呼ばれ、1型糖尿病患者であれば誰でも自由に使用できる。このオープンソースシステムは、商品化されたAIDシステムが発売される何年も前から利用可能で、世界中の1型糖尿病患者によって使用されてきた。
CREATE試験では、最も一般的に使用されているオープンソースAIDシステムAnyDANA-loopの安全性と有効性を初めてRCTで検討した。AnyDANA-loopはインスリンポンプ+CGM+オープンソース人工膵臓システム(APS)アルゴリズムAndroid APSから成る。
対象は、Australian New Zealand Clinical Trials Registry に登録された7~70歳の1型糖尿病患者97例(7~15歳の小児患者48例と16~70歳の成人患者49例)。試験期間は①4週間の慣らし期間、②24週間のRCT期間、③24週間の継続期間―で構成される。①で対象全例にインスリンポンプ(DANA-i)+CGM (DexcomG6)の使用法に慣れてもらい、その後、ランダムにAID群44例(小児21例、成人23例)とSAPT群53例(同27例、28例)に割り付けた。②の24週間のRCT期間では、AID群がオープンソースAIDシステム使用により自動的にインスリン送達を調整するのに対し、SAPT群ではインスリンポンプ+CGMのみを使用。③の24週間の継続期間では両群ともオープンソースAIDシステムを使用することとした。
主要評価項目は、RCT期間の最後2週間に血糖値が目標血糖値範囲(70~180mg/dL)内にある時間の割合(TIR)の群間差とした。
組み入れ基準は、1年以上前に1型糖尿病と診断され、6カ月以上インスリンポンプ療法を受けている、平均HbA1c値10.5%未満の者とした。
ベースライン時の平均年齢は小児群13.0歳、成人群40.0歳、平均HbA1c値はそれぞれ7.5%と7.7%、AID使用経験がある割合はそれぞれ6%と18%、平均TIRはそれぞれ56.1%と62.4%だった。
AID群で24時間TIRが14%改善
有効性について検討した結果、慣らし期間とRCT期間のTIRは、AID群(61.2±12.3%と71.2±12.1%)で増加が認められ、SAPT群(57.7±14.3%と54.5±16.0%)では若干の減少が認められた。平均調整治療効果については、24時間TIRは全体で14%の改善が認められ、AID群の優位性が示された(P<0.001)。
TIR 70%超を達成した割合は、AID群(60%)がSAPT群(15%)の4倍だった。
治療効果に年齢の交互作用は認められなかった(P=0.56)。
効果は治療開始直後から継続
AID群の効果は、小児と成人ともに夜間でより大きく、小児と成人ともに治療開始直後から認められ、RCT期間を通して持続した。
RCT期間の最後2週間の調整平均差はTIRが15.8%(95%CI 11.5~20.0%)、血糖値が-22.4mg/dL(同-22.4~-14.3mg/dL)、HbA1cが-0.6%で、AID群の優位性が示された。
安全性については、RCT期間終了時までに重篤な低血糖、糖尿病性ケトアシドーシスは、AID群、SAPT群のいずれにも認められなかった。
デバイス関連有害事象は、小児ではSAPT群の4件4例(高血糖3件3例、蕁麻疹1件1例)、AID群の5件5例(高血糖3件3例、皮膚感染1件1例、局所皮膚反応1件1例)、計9件9例が発生。成人ではSAPT群で4件4例(高血糖2件2例、デバイス局所感染2件2例)、AID群で5件3例(火傷2件1例、高血糖3件2例)、計9件7例が発生した。
AID群において、試験期間の94%でAIDが正常に作動していた。
以上から、de Bock氏らは「オープンAPSアルゴリズムを用いたオープンソースAIDシステムはSAPTに比べ、1型糖尿病の小児および成人において安全で有効であることが示された」と結論した。
(大江 円)