ステージⅡ大腸がん患者の術後管理に血中循環腫瘍DNA(ctDNA)のリキッドバイオプシーを活用することで、術後補助化学療法が有効な患者を特定し、不要な治療を回避できる可能性が示された。オーストラリア・Walter and Eliza Hall Institute of Medical ResearchのJeanne Tie氏らが、大腸がん患者455例を対象に第Ⅱ相多施設ランダム化比較試験DYNAMICで検討した結果、標準の臨床病理学的基準により判断する場合と比べ、術後補助化学療法の対象をctDNA陽性例のみに限定することで、再発リスクを高めることなく化学療法の施行件数を減少できたとN Engl J Med(2022年6月4日オンライン版)に発表した。
術後4、7週時点で陽性例にのみ施行
試験では、オーストラリアの23施設でステージⅡの大腸がん患者455例(年齢中央値64歳、男性53%)を登録。術後の管理方針をctDNA検査の結果に基づき決定するctDNA管理群(302例)と標準の臨床病理学的基準により決定する標準管理群(153例)に2:1でランダムに割り付け、中央値で37カ月追跡した。
ctDNA管理群では、術後4週または7週の時点でctDNA陽性と判定された患者にオキサリプラチンを含む2剤併用化学療法またはフルオロピリミジン単剤化学療法を施行し、両時点でctDNA陰性の患者には術後補助化学療法を施行しないこととした。
有効性の主要評価項目は2年無再発生存(RFS)とした。
解析の結果、術後補助化学療法を受けた患者の割合は、標準管理群の28%と比べてctDNA管理群では15%と低かった(相対リスク1.82、95%CI 1.25~2.65)。
また、手術から補助化学療法を開始するまでの期間の中央値は、標準管理群の53日と比べてctDNA管理群では83日と長かった。この差はctDNA検査の結果を得るまでの待機期間に起因するものだが、待機期間中の再発は認められなかった。
投与2年時点のRFSで標準の判断基準に対する非劣性を確認
主要評価項目とした2年RFSは、標準管理群の92.4%に対しctDNA管理群では93.5%だった(絶対差1.1%ポイント、95%CI -4.1~6.2%ポイント)。95%CI下限値が事前に設定した非劣性マージンの-8.5%ポイントを上回り、標準管理に対するctDNA管理の非劣性が示された。
ctDNA管理群における3年RFSは、ctDNA陰性で術後補助化学療法を受けなかった患者の92.5%に対し、ctDNA陽性で術後補助化学療法を受けた患者では86.4%だった〔再発または死亡のハザード比(HR)1.83、95%CI 0.79~4.27)。
再発または死亡例はctDNA陰性例が6%、ctDNA陽性例が18%だった。また、術後3年時点の再発率はctDNA陰性例で7%と極めて低く、ctDNA陽性例でも14%にとどまっていた(HR 2.45、95%CI 1.00~5.99)。術後補助化学療法を受けたctDNA陽性例において、投与された薬剤別に3年RFSを見たところ、オキサリプラチンベースの化学療法投与例では92.6%、フルオロピリミジン単剤による化学療法投与例では76.0%だった。
Tie氏らは「ステージⅡの大腸がんでは術後補助化学療法が有効な患者を特定することに加え、再発リスクが低い患者に対する不要な治療を回避することも重要」と指摘した上で、「ステージⅡの大腸がん患者に対し、術後管理方針をctDNA検査の結果に基づき決定することで、再発リスクを高めずに術後補助化学療法の施行件数を減らすことができた」と結論している。
(太田敦子)