米食品医薬品局(FDA)は6月13日、米国で年間30万人以上が発症し、治療法が限られている重度の円形脱毛症(AA)に対する初の全身治療薬として、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬バリシチニブを承認したと発表。同薬はブレークスルーセラピー(画期的治療薬)に指定されていた。日本において同薬は、2017年に関節リウマチを適応症として承認を取得し、アトピー性皮膚炎、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による肺炎の適応も取得している(関連記事「JAK阻害薬が円形脱毛症の有望株に浮上」)。

第Ⅲ相試験:4mg群で約40%の主要評価項目達成率

 AAは頭部に円形または楕円形の脱毛斑ができる疾患だ。毛根を包む「毛包」という組織をリンパ球が攻撃することで髪が抜ける自己免疫疾患と考えられている。JAKは炎症や免疫機能に関与する炎症性サイトカインの免疫活性化シグナル伝達に関わる細胞内分子で、JAK阻害薬はJAKの働きを阻害することで、炎症性サイトカインの異常な産生を抑える作用を有する。

 今回の承認は、50%以上の頭皮脱毛が見られる重症の円形脱毛症患者約1,200例が対症のプラセボ対照第Ⅲ相ランダム化比較試験2件(BRAVE-AA1、BRAVE-AA2)の結果に基づくもの。対象は、AAの重症度評価ツールSeverity of Alopecia Tool(SALT)スコア50以上(頭髪脱毛が50%以上)で、重症AAの罹患期間が6カ月以上の成人患者。バリシチニブ4mg群、同2mg群、プラセボ群に割り付け、1日1回投与した。主要評価項目は、投与後36週目のSALTスコア20以下の達成割合とした。

 解析の結果、主要評価項目を達成した割合は、BRAVE-AA1ではバリシチニブ4mg群で38.8%、同2mg群で22.8%、プラセボ群で6.2%、RAVE-AA2ではそれぞれ35.9%、19.4%、3.3%だった(関連記事「JAK阻害薬バリシチニブが円形脱毛症に有効」)。

 副作用として、上気道感染症、頭痛、痤瘡、脂質異常症、血中クレアチンキナーゼ上昇、尿路感染症、肝酵素値の上昇、毛包炎、疲労、下気道感染症、吐き気、カンジダ感染症、貧血、好中球減少症、 腹痛、帯状疱疹、体重増加などが報告された。

重篤な感染症、悪性腫瘍、血栓症に関し警告

 AA患者へのバリシチニブの使用に際しては、他のJAK阻害薬、免疫調整生物製剤、シクロスポリンなどの他の強力な免疫抑制薬との併用は推奨していない。また重篤な感染症、悪性腫瘍、主要な有害心血管イベント(MACE)、血栓症に関する警告が行われ、感染症の発現や増悪の予防措置としてバリシチニブ治療中および治療後の活動性結核、ウイルスの再活性化などの徴候および症状発現を注意深く観察することを求めている。

 AAの治療をめぐっては、日本における治療の中心はステロイド、局所免疫療法と対処療法である。エビデンスを有する治療法は少なく、保険適用された治療薬であっても、日常診療において必ずしも患者が治療効果を実感できないなどの問題があり、新たな治療法の登場が望まれている。

(小沼紀子)