多囊胞性卵巣症候群(PCOS)を有する妊婦は出産時の心血管リスクが高いことが明らかになった。米・Rochester General HospitalのSalman Zahid氏らは、2002~19年に米国で出産のために入院した妊婦を対象にPCOSと心血管リスクの関係を検討、その結果をJ Am Heart Assoc2022; 11: e025839)に報告した。

PCOS罹患率は経時的に上昇

 PCOSは、一般女性の5〜13%が罹患し、不規則な月経、過剰な男性ホルモン(アンドロゲン)上昇、時に不妊症を生じる。これまでの研究で、PCOSは妊娠関連合併症リスク上昇、将来の心血管疾患リスク上昇に関連していることが示されている。しかし、PCOSと周産期心血管合併症との関係に関するデータは限られている。

 そこでZahid氏らは、2002~19年の全米入院情報抽出データベース(Nationwide Inpatient Sample)における出産のために入院した妊婦7,143万6,308人のデータを用いて、PCOSと周産期心血管合併症との関係を検討した。

 試験期間中に19万5,675例がPCOSと診断された。PCOS罹患率は2002年に出産10万件当たり569件だったのに対し、2019年には出産10万件当たり1万5,349件へ経時的に上昇した。また、PCOS患者における肥満の罹患率は2002年に5.7%から2019年には28.2%へ経時的に上昇した。

 非PCOS患者に比べPCOS患者は、年齢が有意に高く(中央値28歳 vs. 31歳)、糖尿病罹患率(1.7% vs. 13.8%、P<0.01)、肥満罹患率(3.6% vs. 21.4%、P<0.01)、脂質異常症罹患率(0.1% vs. 2.2%、P<0.01)が有意に高かった。

 周産期合併症に関しては、非PCOS患者に対しPCOS患者では妊娠高血圧腎症罹患率(出産10万件当たり4,353件 vs. 1万255件、P<0.01)、子癇罹患率(同134件 vs. 348件、P<0.01)、周産期心筋症罹患率(同30件 vs. 81件、P<0.01)、心不全罹患率(同44件 vs. 103件、P<0.01)がいずれも有意に高かった。

 その他の合併症についても、肺浮腫罹患率(出産10万件当たり33件 vs.111件、P<0.01)、不整脈罹患率(同483件 vs. 1,407件、P<0.01)、静脈血栓塞栓症罹患率(同34件 vs. 89件、P<0.01)が有意に高かった。

妊娠高血圧腎症、心不全リスクが上昇

 年齢、人種/民族、併存症、加入保険の種類、収入を調整後の解析で、PCOSは心血管合併症の独立した予測因子であり、非PCOS患者に対しPCOS患者では妊娠高血圧腎症リスク〔調整オッズ比(OR)1.56、95%CI 1.54~1.59、P<0.01〕、子癇リスク(同1.58、1.54~1.59、P<0.01)、周産期心筋症リスク(同1.79、1.49~2.13、P<0.01)、心不全リスク(同1.76 、1.27~2.45、P<0.01)が有意に高かった。

 さらに、非PCOS患者に対しPCOS患者では入院日数が多く(出産10万件当たり2日 vs. 3日、P<0.01)、入院費も高かった(出産10万件当たり3,616ドル vs. 4,901ドル、P<0.01)。

 以上から、Zahid氏らは「PCOSを有する妊婦は出産時入院中に、妊娠高血圧腎症、子癇、周産期心筋症、心不全のリスクが高く、入院日数、入院費も高くなることが分かった」と結論した。

 論文の責任著者で米・Johns Hopkins UniversityのErin D. Michos氏は、別の研究でメタ解析を行ったところ、非PCOS患者に対しPCOS患者では冠動脈石灰化リスクが2倍であったと報告している(J Womens Health 2022; 31: 762-771)。同氏は「PCOS患者は、脂質異常症、糖尿病、高血圧、心疾患リスクが高く、冠動脈石灰化リスクも高い。PCOS患者では妊娠中およびその後も長期にわたり心血管リスクが上昇することが示された」と強調。その上で「PCOS患者では心血管危険因子のスクリーニングが重要だ。ただし予防の観点からは、健康なライフスタイルと薬物療法によって心血管リスクを低下させることは可能だ」と付言している。

(大江 円)