新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化に関連する因子としては、高齢、糖尿病、心血管疾患、喫煙、肥満、慢性腎臓病、透析などが知られている。中でも腎機能障害は肺炎などのさまざまな感染症の重症度や予後に影響を及ぼすが、日本人COVID-19入院患者を対象に腎機能と予後の関連を調べた研究は少ない。横浜市立大学市民総合医療センター心臓血管センター内科の佐藤亮佑氏らの研究グループは、COVID-19患者の入院時の腎機能と急性期予後の関連を検討。腎機能が良好な患者に比べ、障害が認められた患者では院内死亡、体外式膜型人工肺(ECMO)施行などの発生リスクが有意に高かったとClin Exp Nephrol2022年6月3日オンライン版)に発表した。

腎機能障害500例対象の後ろ向きコホート研究で検討

 腎機能障害は、肺炎や尿路感染症などさまざまな感染症の重症度と予後に関連する潜在的な因子であり、腎機能の評価はCOVID-19患者におけるリスクの層別化およびそれに基づく介入法の決定に有用な可能性がある。しかし、日本人COVID-19患者における入院時の腎機能が予後に及ぼす影響に関する検討は十分ではない。そこで、研究グループは国内8施設で後ろ向きコホート研究を行い、両者の関連を調査した。

 対象は、2020年2月5日~12月31日に、PCR検査によりCOVID-19と診断され入院した患者500例(平均年齢51±19歳、男性61.2%)。

 腎機能障害の定義は、入院時の推算糸球体濾過量(eGFR)の低下(60mL/分/1.73m²未満)または蛋白尿(1+以上)とし、主要評価項目は院内死亡、ECMOまたは人工呼吸器(侵襲的/非侵襲的方法)の使用、集中治療室(ICU)入室の複合とした。

 500例のうち、腎機能良好群は329例、腎機能障害群は171例だった。両群の背景を見ると、腎機能障害群は有意に高齢(48±17歳 vs. 63±16歳)で、高血圧糖尿病、脳血管/心血管疾患の割合も有意に多かった(全てP<0.0001)。

腎機能障害で院内死亡率などが上昇

 検討の結果、主要評価項目は60例(12.0%)に発生し、腎機能良好群と比べ腎機能障害群で発生率が有意に高かった(5.2% vs. 25.2%、P<0.0001)。項目別に見ても、院内死亡25例(1.2% vs. 12.3%、P<0.0001)、ECMO施行8例(0.9% vs. 2.9%、P=0.09)、人工呼吸器使用36例(4.0% vs. 13.5%、P<0.0001)、ICU入室48例(5.2% vs. 18.1%、P<0.0001)と、いずれも腎機能障害群で発生率が有意に高かった(図1)。

図1. 主要評価項目のイベント発生率

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 次にeGFRと蛋白尿で層別化し、主要評価項目のイベント発生を評価した。eGFRに応じて3つのグループに分類した結果、発生リスクはeGFRの低下に伴い有意に上昇し、蛋白尿を有する患者で有意に高かった(全てP<0.0001、図2)。

図2. 腎機能障害の程度(左)、尿蛋白の有無(右)別に見たイベント発生リスク

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(図1、2とも横浜市立大学プレスリリースより)

 多変量ロジスティック回帰分析の結果、COVID-19重症化と入院時の腎機能障害に有意な関連が示された(オッズ比2.35、95%CI 1.14~4.86、P=0.02)。

 以上を踏まえ、研究グループは「COVID-19患者における入院時の腎機能障害は院内死亡、ECMOおよび人工呼吸器使用、ICU入室のリスクを上昇させることが明らかになった」と結論。「この結果は、西欧諸国の既報と一致しており、日本人COVID-19患者においても初期の腎機能評価がその後の重症化の予測因子になりうると考えられる」と付言している。

(小野寺尊允)