造血幹細胞移植は難治性の血液疾患に対する根治療法だが、合併症である移植片対宿主病(GVHD)のコントロールが治療の成否を握る。同種造血幹細胞後の慢性GVHDにより膵萎縮が生じること、膵萎縮では回復する可能性があることが報告されているが、その詳細は明らかになっていない。自治医科大学総合医学第一講座(血液科)の岡田陽介氏、学内准教授の仲宗根秀樹氏、教授の神田善伸氏らの研究グループは、造血幹細胞移植後の膵萎縮の発症頻度や臨床的意義について検討。膵萎縮例では死亡リスクが高かったとの結果をJ Gastroenterol(2022年6月3日オンライン版)に報告した。

慢性GVHDの抑制で膵萎縮の回復が期待

 対象は、自治医科大学さいたま医療センターで同種骨髄・末梢血幹細胞移植を行った170例。CT画像を用い移植後の膵萎縮の発症頻度や予後について後ろ向きに検討した。

 55例(32.4%)に移植前に比べ20%の膵萎縮が見られ、うち11例は回復した。

 膵萎縮例では中等症〜重症の慢性GVHDが多く見られた。膵萎縮からの回復は、女性ドナーから男性レシピエントへの移植施行例で見られやすいことが分かった。女性ドナーから男性レシピエントへの移植は他の組み合わせと比べGVHDが起こりやすいとされているが、GVHDの改善に伴い膵萎縮が回復したと考えられた。一方、免疫抑制薬の長期継続を要する患者では膵萎縮が回復しにくいことが明らかになった。

 膵萎縮がない例では移植後に低下した体重が徐々に回復したが、膵萎縮例では体重は低下したままであった。

 膵萎縮例では全生存率の低下〔ハザード比(HR) 4.91、95%CI 2.92〜9.24〕および非再発死亡リスクの上昇(同8.75、3.52〜21.7)が認められた。

 これらの結果から、研究グループは「造血幹細胞移植後には膵臓サイズの経過観察が重要であることを示唆している」と結論。膵萎縮が予後に及ぼす影響を明らかにするため、さらなる前向き研究が必要であると付言している。

編集部