10秒間片足立ちができない中高年は、10年以内の死亡リスクが高いことが示された。ブラジル・Exercise Medicine Clinic-CLINIMEXのClaudio G. Araujo氏らは、CLINIMEXエクササイズコホート研究に参加した中高年を対象に、10秒間の片足立ち検査の結果が全死亡リスクの予測因子となるかどうかを検討。結果を、Br J Sports Med(2022年6月22日オンライン版)に報告した。
71~75歳の半数以上が片足立ち不能
加齢に伴い運動機能、筋力、柔軟性などが低下するのに対し、バランス機能は比較的長く保存されるものの、50歳代の後半から急速に低下し、転倒や健康への悪影響のリスクが高まる。しかし、中高年の健診では定期的なバランス機能の評価は行われていない。
そこでAraujo氏らは、CLINIMEXエクササイズコホート研究の参加者を対象に10秒間の片足立ち検査が、10年以内の全死亡リスクを予測できるかどうかを検討した。CLINIMEXエクササイズコホート研究は、有酸素・無酸素運動機能、運動カウンセリングを受けるためにExercise Medicine Clinic-CLINIMEXを受診した6~99歳の人を対象に、身体的フィットネスおよびその他の運動関連変数、従来の心血管危険因子と死亡との関係を検討する目的で1994年に開始された。
同氏らは今回、2009年2月10日~20年12月10日に同院を受診した51~75歳の1,702例(平均年齢61.7歳、男性67.9%)を対象に、身体的、臨床的測定に加えて、10秒間の片足立ち検査を実施。10秒間の片足立ち検査では、正面を向いて両腕を身体の脇に付け、支えなしに片足立ちを行った。10秒間の片足立ちは3回まで挑戦できることとした。10秒間の片足立ちを支えなしに行えた場合を「可能」、できなかった場合を「不可能」と判定した。
10秒間片足立ちが「可能」と判定されたのは1,354例(79.6%)、「不可能」と判定されたのは348例(20.4%)。年齢層別に「不可能」の割合を見ると、51~55歳では4.7%、56~60歳では8.1%、61~65歳では17.8%、66~70歳では36.8%、71~75歳では53.6%だった。
不可能群で全死亡リスク84%高い
中央値で7年(四分位範囲4.16~9.41年)の追跡期間中に123例(7.2%)が死亡し、死因はがんが32%、心血管疾患が30%、呼吸器疾患が9%、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連が7%だった。
10秒間片足立ち可能群と不可能群で死因に差は見られなかったが、死亡率は不可能群で有意に高かった(4.6% vs. 17.5%、P<0.001)。
可能群に比べ不可能群では、肥満(22.6% vs. 40.2%、P<0.001)、冠動脈疾患(30.0% vs. 40.5%、P<0.001)、高血圧(43.5% vs. 65.3%、P<0.001)、脂質異常症(52.7% vs. 63.0%、P=0.001)、糖尿病(12.6% vs. 37.9%、P<0.001)の割合が有意に多かった。
年齢、性、BMI、併存症を調整後の解析では、可能群に対し不可能群で10年以内の全死亡リスクが84%高いと推定された〔ハザード比(HR)1.84 、95%CI 1.23 ~ 2.78、P<0.001〕。
研究の限界としてAraujo氏らは、①観察研究のため因果関係が推定できない、②対象全員が白人ブラジル人であった、③最近の転倒歴、身体活動度、食事、喫煙、薬剤の使用などバランス機能に影響を及ぼす因子についての情報がなかった―などを挙げている。
これらを踏まえて、同氏らは「年齢、性、身体・臨床変数にかかわらず、10秒間片足立ちの結果と全死亡リスクに独立した関連が認められた」と結論。「中高年の健診に定期的に10秒間片足立ち検査を加えることが有益である」と指摘した。
(大江 円)