米・Retinal ConsultantsのMargaret A. Chang氏らは、脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)の患者を対象に、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬ラニビズマブの有効性および安全性について、投与経路別にポートデリバリーシステム(PDS)と硝子体内注射を比較した第Ⅲ相非盲検ランダム化比較試験Archwayの探索的解析を実施。その結果、ラニズマブによる治療満足度は両者ともに高いことが示された。さらに、PDSによる投与を受けた患者の93.2%は硝子体内注射よりPDSの方が良いと回答したとの結果をJAMA Ophthalmol(2022年6月16日オンライン版)に発表した。
治療満足度はPDS、硝子体内注射ともに高い
Archway試験は、米国の78施設で抗VEGF薬の効果が認められた50歳以上のnAMD患者418例(平均年齢75.0歳)を登録。PDS群(PDSでラニビズマブ100mg/mLを持続投与、24週間隔の定期補充)と硝子体内注射群(ラニビズマブ0.5mgを4週間間隔で硝子体内注射)を3:2でランダムに割り付けた。その結果、主要評価項目である投与開始後36週および40週時点におけるベースラインからのbest-corrected visual acuity score(BCVA)の平均変化量において、PDSは硝子体内注射と同等の有効性を示し、忍容性も高いことが示されていた(Ophthalmology 2022; 129: 295-307)。
今回の研究では、Chang氏らは各治療に対する満足度および患者の意向(どちらの治療を希望するか)を探索的に評価した。
治療満足度は、Macular Disease Treatment Satisfaction Questionnaire(MacTSQ)の質問票を用い、投与開始後40週時点でのPDS群(237例)と硝子体内注射群(159例)における評価を行った(スコア範囲0~72、スコア60以上で満足度が高い)。その結果、40週時点の平均スコアはPDS群が68.0(95%CI 67.4~68.6)、硝子体内注射群が66.1(同64.9~67.3)で両群とも治療満足度が高く、両群の差は極めて小さかった(群間差1.9、95%CI 0.7~3.1)。
PDS希望理由は治療回数、不快感、不安が少ない
次に、PDS Patient Preference Questionnaire(PPPQ)の質問票を用い、PDS群の234例を対象に2種類の治療に対する患者の意向を評価した。その結果、40週時点で硝子体内注射を希望すると回答した患者は3例(1.3%)にすぎなかったのに対し、PDSを希望すると回答した患者は218例(93.2%)に上り、172例(73.5%)はPDSを極めて強く希望すると回答した。最も多かったPDSの希望理由は治療回数が少ないこと(80.3%)で、次いで不快感が少ない(75.2%)、不安が少ない(53.7%)の順だった。
また、PDSによる投与と同時に反対側の眼に硝子体内注射を行った患者78例のサブグループ解析では、72例(92.3%)がPDSを希望すると回答した。
以上を踏まえ、Chang氏らは「PDS群のほぼ全例が硝子体内注射よりPDSによる投与を希望したが、治療満足度はいずれの投与経路でも高かった。これまでの報告と今回の解析結果は、PDSがnAMD患者にとって硝子体内注射に代わる有用な治療選択肢になりうることを示している」と結論している。
(編集部)