日本医師会医師の働き方検討委員会は6月23日、日本医師会会員のうち勤務医の就労環境や健康状態、医師の働き方改革に関する第3回調査の結果を公表した。報告書によると、勤務医の6人に1人(16.3%)が「健康でない」または「不健康」と回答し、健康障害へのリスクが高まる時間外労働が80時間以上も12人に1人(8.1%)に上っていたという。

約8万人から1万人をランダムに抽出、有効回答率27.9%

 日本医師会の勤務医会員を対象とする「勤務医の健康の現状と支援のあり方に関するアンケート調査」は、これまで2009年(以下、第1回調査)と2015年(以下、第2回調査)に行われている。

 3回目となる今回は、勤務医約8万人からランダム抽出した1万人が対象の本調査に加え、世代間の比較を行うために本調査の対象とならず、第1・2回調査で回答割合が少なかった20~30歳代の1万1,737人が対象の追加調査(以下、若手調査)を行った。調査項目は、基本調査項目、健康状況、労働機能やメンタルの状況、勤務医の健康を担保する施策などを含む47項目で、昨年(2021年)12年9月~今年1月31日に勤務医2,786人(有効回答率27.9%、平均年齢54.3歳、男性約80%)、若手勤務医1,246人(同10.6%)から回答を得た。

 勤務形態は常勤が約90%を占め、大学病院勤務は15%だった。診療科は内科系が34%、外科系が22%、研修医が8%、精神科が6%、産婦人科が6%、小児科が5%などだった。

2割が直近1カ月の当直4回以上

 調査の結果、直近1カ月当たりの休日が4日以下だったのは30.1%(若手調査33.1%)、うち休日がないとの回答は6.3%(同4.0%)あった。

 直近1カ月間に当直を4回以上行っていたのは21.6%(若手調査51.1%)おり、当直時の平均仮眠時間が4時間未満としたのは43.9%(同63.3%)だった。

 調査1カ月前の主たる勤務先における時間外労働時間が80時間を超えていたのは8.1%(若手調査12.3%)で、うち100~119時間が2.0%(同3.2%)、120時間以上が1.6%(同2.7%)だった。主たる勤務先の労働時間外に、アルバイトや外勤を行っていたのは46.0%存在した(同31.2%)。

 自身の健康状態に関して、全体の83.1%(若手調査79.8%)が「とても健康である」「比較的健康である」と回答した一方で、全体の6人に1人、若手医師の5人に1人が「不健康である」「どちらかというと健康ではない」(全体16.3%、若手調査20.1%)との回答も見られた。40~50歳代でも18.5~19.3%と2割近かった。

3割超は時間外労働上限の規制義務化を知らず

 簡易抑うつ症状尺度(QIDS)に基づく評価により、正常と判定されたのは68.7%(若手調査60.9%)。中等度が6.8%(同9.1%)、重度が1.7%(同3.3%)、極めて重度が0.3%(同0.9%)見られた。

 自殺や死について1週間に数回以上考えたことがあるとの回答は4.0%(若手調査5.4%)と少なかったが、他の医師に体調不良の相談を「全くしない」割合も4割に上った(全体40.0%、若手調査39.6%)。その理由として「同僚に知られたくないから」(同15.6%、29.2%)、「自分が弱いと思われそうだから」(同6.9%、19.5%)が一定数を占めたことから、気軽に相談できない現状が示唆された。

 医療法改正により2024年度に医師の時間外労働上限の規制が義務化される。これに関して、34.1%の勤務医(若手調査50.2%)が「あまり知らない」「全く知らない」と回答した。

 さらに、41.6%が時間外労働上限を超えた場合の追加的健康確保措置の内容(「連続勤務時間制限、勤務間インターバル9時間以上」「代償休暇」「月の上限を超える場合の面接指導」)について知らなかった(若手調査48.3%)。

 以上の結果を踏まえ、日本医師会は医師の勤務環境の改善が進みにくい診療科や地域、施設の特徴に応じた支援継続が必要であるとしている。また健康支援については、20~30歳代の若手医師、管理・指導に伴う負担がかかる40~50歳代の勤務医、新型コロナウイルス感染症の診療に従事している勤務医、中等度以上の抑うつ症状などの健康危機に直面している勤務医への介入の重要性を挙げている。

(田上玲子)