多くの一次医療機関(クリニック、医院)や調剤薬局では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を含めた発熱患者に対応しているが、室内環境制御の実態は不明である。そこで、日本環境感染学会臨床研究推進委員会はこれらの施設を対象に、COVID-19患者を含めた発熱患者の診療状況や室内換気の手法についてアンケートを実施。結果を6月28日に発表した。

エリア区分、気流の流れ、換気量について調査

 アンケートは2022年3月1日~4月30日、宮城県、栃木県、東京都、神奈川県、石川県、愛知県、長崎県の医師会・薬剤師会に加入しているクリニック・医院、調剤薬局を対象に実施。有効回答件数はクリニックおよび医院が676件、調剤薬局が219件であった。

 アンケートでは換気方法の工夫について、①エリアの区分(診察室や調剤室と待合室の境界をビニールシートなどで区分)②気流の流れ(医療従事者側から患者側エリアに向けた気流の流れの工夫)③換気量(HEPAフィルター付き換気装置、空気清浄機、サーキュレーターなどの導入、窓を常時5~10cm開けるなどの工夫)-の観点から回答を集計した。

発熱患者対応施設ではHEPAフィルター付き換気装置の導入に積極的

 集計の結果、患者診察室(または調剤室)と待合室の境界をビニールシートなどで区分している割合はクリニック・医院で62.8%、調剤薬局で70.8%、飛沫防止用パーテーションの設置割合はそれぞれ79.5%、87.7%だった。

 また、医療従事者側(または従業員側)から患者側エリアに向けた気流の流れを工夫している割合はクリニック・医院で55.6%、調剤薬局で38.3%だった。クリニック・医院のうち、発熱患者を診療していない施設に比べ、診療している施設では、気流の流れを工夫している割合が有意に高かった(P=0.0017、1)。

表1. 発熱患者診療の有無別に見た気流の流れを工夫している施設数

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 HEPAフィルター付き換気装置の導入割合はクリニック・医院で35.2%、調剤薬局で21.9%。クリニック・医院のうち、発熱患者を診療していない施設に比べ、診療している施設では導入割合が有意に高かった(P=0.0046、2

表2. 発熱患者診療の有無別に見たHEPAフィルター付き換気装置導入施設数 

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 空気清浄機、サーキュレーター、換気扇の導入割合、窓を常時5~10cm開けることで換気を図っている割合は、クリニック・医院でそれぞれ86.8%、59.5%、88.0%、61.4%。調剤薬局でそれぞれ82.8%、37.0%、85.8%、51.6%であった。なお、クリニックおよび医院において、発熱患者に対する診療の有無による各割合の差異は認められなかった。

職員控室では人数制限や窓開けによる換気を多く実施

 クリニック・医院に対しては、採取する検体の種類と採取場所における換気方法の差異を調査。唾液を採取する施設と比べ、鼻咽頭拭い液を採取する施設では、検体の採取場所にHEPAフィルター付き換気装置や空気清浄機を導入している割合が多い傾向にあったという。

 さらに、職員控室における換気の工夫については、クリニック・医院、調剤薬局いずれにおいても人数制限を設ける、窓を常時5~10cm開ける割合が高かった(3)。

表3. 職員控室において換気の工夫を実施している施設数(上:医院およびクリニック、下:調剤薬局)

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(表1~3は全て日本環境感染学会発表資料より)

(陶山慎晃)