米・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのAndrea Cercek氏らは、ミスマッチ修復欠損(dMMR)を有する局所進行性直腸がん患者を対象に、新規抗PD-1抗体dostarlimabをネオアジュバント療法として6カ月間投与する第Ⅱ相試験を実施。投与後6カ月の追跡を完了した12例全例が完全奏効(CR)を達成し、予定されていた化学放射線療法と手術を施行した症例はいなかったとN Engl J Med(2022; 386: 2363-2376)に報告した。
未治療の局所進行がんが対象
局所進行性直腸がんは大腸がんの中でも予後が悪く、薬物療法、放射線療法、手術を組み合わせた集学的治療が行われる。薬物療法や放射線療法の毒性は大きな問題で、手術に至った患者では人工肛門が生涯必要となることも多い。
直腸腺がんの5~10%を占めるdMMRがんは、標準的な化学療法に反応不良である一方、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が極めて効果的であると報告されている。全身療法後に病勢進行を来したdMMR大腸がんなどを対象にdostarlimabの有効性を検討した第Ⅰ相試験では、抗腫瘍効果が認められ、安全性も良好だった(関連記事「dMMR固形がんへの新規抗PD-1抗体が有望」)。
第Ⅱ相試験の対象は18歳以上のdMMRを有する臨床病期Ⅱ〜Ⅲの直腸腺がん患者。全身状態(ECOG-PS)0/1で遠隔転移がなく、直腸がんに対する免疫、化学、放射線療法歴を有さない症例が適格で、30例の登録を予定している。dostarlimab 500mgを3週ごとに6カ月(9サイクル)投与し、臨床的CRが得られなかった場合はカペシタビン+放射線療法、さらに直腸間膜全切除を行うこととした。
主要評価項目は、dostarlimab治療完了後12カ月時点の持続的な臨床的CR(非手術例)またはdostarlimab治療完了後の病理学的CR(手術例)および全奏効率とした。
9週以内に効果発現、全例がCR達成
今回の報告の時点で計16例を登録し、12例がdostarlimab治療と6カ月以上(6~25カ月)の追跡を完了した。16例の年齢中央値は54歳(範囲26~78歳)、女性62%、臨床病期はⅢが15例、Ⅱが1例だった。受診時の主症状は直腸出血が88%、便秘が31%、腹痛が25%だった。
追跡を完了した全12例(100%、95%CI 74~100%)で臨床的CRが得られ、MRIや18F-FDG PET、内視鏡による評価、直腸指診、生検のいずれでも残存腫瘍は認められなかった(図)。現時点で化学放射線療法および手術を受けた症例や、進行または再発を来した症例はなく、4例が1年以上CRを持続し、登録された16例全例が生存している。
図. dostarlimab投与後の腫瘍縮小
(N Engl J Med 2022; 386: 2363-2376)
81%でdostarlimab投与開始から9週以内に症状が消失した。3カ月時の内視鏡的CRは5例、放射線CRは2例だった。
有害事象は16例中12例で認められ、発疹・皮膚炎(31%)、瘙痒(25%)、疲労感(25%)、悪心(19%)、甲状腺機能異常(6%)の頻度が高かった。グレード3以上のものは報告されなかった。
Cercek氏らは「dMMRを有する局所進行直腸がんは、抗PD-1抗体dostarlimabの単剤治療に高い感受性を示した。奏効期間の評価にはより長期の追跡が必要である」と結論している。
(小路浩史)