炭酸飲料(ソフトドリンク)やカロリーオフのソフトドリンク摂取と血圧との潜在的な関連を検討した前向き研究は少ない。メキシコ・National Institute of Public HealthのNancy López-Olmedo氏らは、両者の関連を検討する前向きコホート研究を実施。結果をNutr J(2022; 21: 37)に報告した。
ソフトドリンク消費大国で約1,300人の成人が対象
加糖飲料(SSB)の摂取は体重増加、2型糖尿病、冠動脈性心疾患のリスクと関連しており、モデル動物を用いた研究ではSSBの過剰摂取は高血圧を引き起こす可能性が示唆されている。しかし、明確なメカニズムは分かっておらず、カロリーオフのソフトドリンクによる血圧変動についても明らかでないという。
そこでLópez-Olmedo氏らは、世界第2位のソフトドリンク消費国であるメキシコにおいて、成人を対象としたソフトドリンクおよびカロリーオフソフトドリンクと血圧との関連を検討した。
対象は、同国で実施されたHealth Workers Cohort Studyに2004〜18年に登録された成人1,324人。ソフトドリンクおよびカロリーオフソフトドリンクの摂取量は半定量式食物摂取頻度質問表により評価した。具体的にはコーラ飲料とそれ以外のフルーツ味の炭酸飲料をソフトドリンク、カロリーオフの甘味料を使ったコーラ飲料とそれ以外の味付き炭酸飲料をカロリーオフソフトドリンクと定義し、標準容量は355mLに設定。血圧測定は訓練された職員が行った。
ソフトドリンク摂取と血圧上昇に有意な関連
対象1,324人を最長13.7年(平均8.7年)追跡した。摂取頻度は、ソフトドリンクが非摂取群77人、週1杯未満群285人、1〜4杯未満群684人、5杯以上278人、カロリーオフソフトドリンクがそれぞれ933人、252人、95人、44人だった。
10年ごとの血圧の変化を解析した結果、収縮期血圧は平均5.65mmHg、拡張期血圧は平均7.59mmHgの上昇が認められた。一方、1日当たりのドリンク摂取量はソフトドリンクが平均0.12杯、カロリーオフソフトドリンクが平均0.01杯いずれも減少した。
10年間のソフトドリンクおよびカロリーオフソフトドリンク摂取量と血圧との関連を検討したところ、ソフトドリンクの摂取量が1杯増加するごとに収縮期血圧の2.08mmHg(95%CI 0.21〜3.94mmHg)の上昇、拡張期血圧の2.09mmHg(同0.81〜3.36mmHg)の上昇との有意な関連が示された(順にP=0.03、P=0.001)。カロリーオフソフトドリンクと血圧に関連は認められなかった。
以上から、López-Olmedo氏らは「日常的なソフトドリンクの摂取は血圧を上昇させるという仮説を裏付ける結果が得られた」と結論。「さらなる検証が必要であるが、食料政策や推奨食品におけるソフトドリンク規制が国民レベルでの血圧管理に役立つだろう」と考察している。
(松浦庸夫)