米国における二大死因である心血管疾患およびがんの初発(一次)予防において、ビタミンやミネラルのサプリメント(以下、サプリ)の有用性が指摘されている。米・Kaiser Permanente Evidence-based Practice CenterのElizabeth A. O'Connor氏らは、これらのサプリ使用に関する米予防医学専門委員会(USPSTF)の勧告の改訂作業に際し、心血管疾患およびがんの初発予防としての有用性に関するシステマチックレビューとメタ解析を実施。これらのサプリ使用によるがん、心血管疾患、全死亡に対する利益はほぼ認められなかったとの結果を、JAMA2022年6月21日オンライン版)に報告した。(関連記事「心血管疾患・がん予防サプリ、また推奨せず」)

84件・73万9,803例を対象に利益と害を検討

 がんおよび心血管疾患に共通する疾患経路として、酸化ストレスや炎症、メチオニン代謝があり、これらの経路の抑制に関与するビタミンおよびミネラルの補給が、両疾患の予防戦略として提唱されている。観察研究では血中のビタミン、ミネラル濃度と両疾患との関連性が示されており、2011年~14年に米国成人の52%がサプリを使用しているという。

 なおUSPSTFは2014年、がんおよび心血管疾患予防としてβカロチンまたはビタミンEの使用を推奨しないよう勧告。マルチビタミンを含むサプリ使用に関しては、利益と害のエビデンスが不十分であると結論している(Ann Intern Med 2014; 160: 558-564)。

 今回、O'Connor氏らが実施したビタミン・ミネラルサプリのベネフィット・リスクに関するシステマティックレビューとメタ解析は、この勧告を更新するエビデンスとして位置付けられている。

 同氏らは、前回勧告でのエビデンス収集以降の2013年1月~22年2月1日に発表された論文をMEDLINE、PubMed、Cochrane Library、EMBASEから、「がんまたは心血管疾患がない成人におけるビタミン・ミネラルサプリに関するランダム化比較試験(RCT)」「ビタミン・ミネラル不足でない成人におけるこれらのサプリ使用による害に関する観察研究」をキーワードとして検索。さらに、ClinicalTrials.govおよびWorld Health Organization International Clinical Trials Registry Platformで進行中のサプリの臨床試験も検索し、計84件・73万9,803例〔ランダム化比較試験(RCT):78件・32万4,837例、観察研究:6件・39万689例〕を抽出し、メタ解析を行った。主要評価項目は死亡、心血管イベント、がんの発生率、重篤な有害事象とした。

 なお研究の組み入れ条件は、2017年のHuman Development Index(HDI:人間開発指数)で"very high"に属する国で実施されたものとした。また対象には、心血管疾患の危険因子を有する者、大腸腺腫や非メラノーマ皮膚がんの既往例も含まれた。

ビタミンEサプリのエビデンス、有用でないことを示す最強のもの

 プール解析の結果、マルチビタミンのサプリ使用はさまざまながん種発生率の有意な低下と関連していた〔RCT 4件・4万8,859例、I2=0%、オッズ比(OR)0.93、95%CI 0.87~0.99、絶対リスク差(ARD)-0.2~-1.2%〕。肺がん発生率については、マルチビタミンのサプリ使用によるORは0.75(95%CI 0.58~0.95、RCT 2件・3万6,052例、両RCTのARDはいずれも−0.2%、I2=30%)だった。

 βカロチンのサプリ使用(ビタミンAとの併用または非併用)は、肺がんリスクの上昇(OR 1.20、95%CI 1.01~1.42、ARD-0.1~0.6%、RCT 4件・9万4,830例、I2=38.8%)、心血管死リスクの上昇(同1.10 、1.02~1.19、-0.8~0.8%、RCT 5件・9万4,506例、I2=0%)といずれも有意な関連が見られた。

 βカロチンサプリは、特にビタミンAとの併用において肺がん高リスク例で肺がん発生リスクを上昇させる可能性が高いとの、前回の勧告を追認する結果であった。

 今回、ビタミンDサプリ使用のエビデンスとして、新たにRCT 32件とコホート研究2件の結果が加わった。しかし、ビタミンDサプリ使用は全死亡抑制(OR 0.96、95%CI 0.91~1.02、RCT 27件・11万7,082例、I2=0%)、心血管イベント発生抑制(同1.00、0.95~1.05、RCT 7件・7万4,925、I2=0%)、がん発生抑制(同0.98、0.92~1.03、RCT 19件・8万6,899例、I2=0%)といずれも有意な関連はなく、前回の勧告と同様の結果であった。

 ビタミンEサプリ使用は、全死亡(OR 1.02、95%CI 0.97~1.07、RCT 9件・10万7,772例、I2=0%)、心血管複合イベント発生(同0.96、0.90~1.04、RCT 4件・6万2,136例、I2=0%)、がん発生(同1.02、0.98~1.08、RCT 5件・7万6,777例、I2=0%) といずれも有意な関連はなかった。ビタミンEサプリは有益でないことを示す最も強力なエビデンスだった。 その他のサプリメント使用による有益性に関しては、エビデンスが不明確、最小限、皆無だった。

 限定的なエビデンスではあるが、一部のサプリメントで重篤な有害事象〔股関節骨折(ビタミンAサプリ)、出血脳卒中(ビタミンEサプリ)、腎臓結石(ビタミンCサプリおよびカルシウムサプリ)〕との関連が示唆された。

前回勧告とおおむね一貫

 今回のメタ解析結果から、ほとんどのビタミンおよびミネラルのサプリは、栄養不良でない健康成人において心血管疾患、がん、全死亡の予防に対し利益がないことが示された。例外として、マルチビタミンサプリの使用によりがん発生リスクがわずかに低下した。

 しかし、適切な検出力を有するマルチビタミンサプリのRCTは6件中3件で、うち1件はサプリの使用期間中央値が3.6年と短く、別の1件は抗酸化物質に限定されていた。 O'Connor氏らは「いずれにせよ、がん発生率の低下に関するマルチビタミンサプリの知見を除き、βカロチンは肺がんの高リスク例で肺がんの発生リスクの上昇と関連するなど、結果はUSPSTFの2014年勧告とおおむね一貫している」と結論している。

(田上玲子)