不妊症、不育症歴のある女性は脳卒中リスクが高いことが示された。オーストラリア・University of QueenslandのChen Liang氏、Gita D. Mishra氏らは、世界7カ国の女性62万例のデータを用いて不妊症、不育症と致死的・非致死的脳卒中リスクの関係を検討した結果をBMJ2022; 22; 377: e070603)に報告。流産/死産歴を有する女性では、健康的な生活習慣とともに、脳卒中危険因子の早期モニタリングが脳卒中リスクを低減させる可能性があると指摘している。

日本を含む8研究を解析

 世界的に脳卒中は女性の死亡と障害の主な原因の1つであり、2019年に約300万人の女性が脳卒中により死亡した。さらに、女性の脳卒中による障害生存年数は1,000万に上り、男性に比べ44%も多かった。

 女性の脳卒中リスク上昇の原因として、肥満高血圧糖尿病などの危険因子が知られているが、これだけで全てを説明することはできない。これまでに不妊症流産、死産と長期脳卒中リスクとの関連を示す研究が報告されているが、まだ結論は出ていない。

 そこでLiang氏らは今回、国際コンソーシアムInterLACEのデータに含まれる7カ国(オーストラリア、中国、日本、オランダ、スウェーデン、英国、米国)8研究に参加する女性の不妊症流産、死産に関するデータを用いて致死的・非致死的脳卒中リスクとの関係を解析した。InterLACEは性と生殖に関する健康と慢性疾患の関係を研究するため2012年6月に設立された国際コンソーシアムで、現在は12カ国の観察研究27件に参加する女性85万超人のデータが集積されている。

 対象は61万8,851例(年齢32.0~73.0歳)。中央値で13.0年〔四分位範囲(IQR)12.0〜14.0年〕の追跡期間中に9,265例(2.8%)が中央値で62.0歳(IQR 54.0〜70.0歳)時に非致死的脳卒中を発症。中央値で9.4年(IQR 7.6〜13.0年)の追跡期間中に4,003例(0.7%)が中央値で71.0歳(IQR 64.0〜76.0歳)時に致死的脳卒中を発症した。

 不妊症流産、死産の既往がある女性はそれぞれ17.2%、16.6%、4.6%だった。

不妊症で虚血性脳卒中リスク15%上昇

 人種/民族、BMI、喫煙状況、教育レベルを調整し高血圧既往歴で層別化した結果、不妊症歴のない女性に対しある女性では非致死的脳卒中リスクが14%高かった〔調整ハザード比(aHR)1.14、95%CI 1.08~1.20〕。非致死的脳卒中のサブタイプ別に解析すると、不妊症で虚血性脳卒中リスクが15%高かった(同1.15、1.07 ~1.23)。

反復流産で致死的脳卒中リスク8割増

 妊娠経験のある女性のうち、流産の既往がない女性に対し、既往がある女性では非致死的脳卒中リスクが11%高かった(aHR 1.11、95%CI 1.07~1.15)。流産回数が1回、2回、3回以上に増加するのに伴い、非致死的脳卒中リスクは7%(同1.07、1.04~1.10)、12%(同1.12、1.07 ~1.17)、35%(同1.35、1.27 ~1.44)上昇した。

 サブタイプ別に解析すると、流産の既往がない女性に対し3回以上の反復流産を経験した女性では虚血性非致死的脳卒中リスクが37%(aHR 1.37、95%CI 1.23~1.53)、出血性非致死的脳卒中リスクが41%(同1.41、1.08~1.84)上昇した。

 致死的脳卒中についても同様の結果で、流産の既往がない女性に対しある女性では流産回数が1回、2回、3回以上に増えるのに伴い、致死的脳卒中リスクは8%(aHR 1.08、95%CI 0.96~1.21)、26%(同1.26、1.07~1.49)、82%(同1.82、1.58~2.10)上昇。サブタイプ別では、3回以上の反復流産を経験した女性は虚血性致死的脳卒中リスクが83%(同1.83、1.39~2.41)、出血性致死的脳卒中リスクが84%(同1.84、1.39~2.44)上昇した。

反復死産で虚血性非致死的脳卒中リスク77%増

 妊娠経験がある女性の解析では、死産経験がない女性に対しある女性では非致死的脳卒中リスクが31%高く(aHR 1.31、95%CI 1.10~ 1.57)、死産が1回で32%(同1.32 、1.15~1.51)、2回以上で29%(同1.29、0.84 ~ 1.98)高かった。サブタイプ別に見ると、2回以上の反復死産を経験した女性は虚血性非致死的脳卒中リスクが77%(同1.77、1.54~ 2.02)高かった。

 死産経験がない女性に対しある女性では致死的脳卒中リスクも7%高く(aHR 1.07、95%CI 1.00~ 1.13)、リスクは死産回数の増加に伴い上昇した(1回:aHR 0.97、95%CI 0.91~ 1.03、2回以上:同1.26 、1.15 ~1.39)。サブタイプ別に見ると、2回以上の反復死産を経験した女性では出血性致死的脳卒中リスクが44%(同 1.44、1.35~ 1.53)高かった。

 以上から、Liang氏らは「不妊症や不育症は女性特有の脳卒中危険因子であり、リスクの強さは脳卒中のサブタイプによって異なることが示された」と結論。「今回の研究は観察研究のため因果関係は証明できないが、不妊症を有する女性における脳卒中リスク上昇には多囊胞性卵巣症候群(PCOS)や早発卵巣不全(POI)が、反復流産/死産歴がある女性における脳卒中リスク上昇には血管内皮細胞機能障害が影響している可能性がある。また不妊症や不育症と関連する喫煙や肥満などの不健康な生活習慣により、脳卒中リスクが上昇した可能性がある」と説明した上で、「脳卒中リスクの上昇を防ぐには、不妊症や不育症歴を有する女性では健康的な生活習慣とともに早期からの血圧、血糖値、コレステロール値のモニタリングが推奨される」と指摘した。

(大江 円)