全身の炎症を伴う急性熱性疾患である川崎病は、先進国における小児の代表的な後天性心疾患として知られるが、発症原因はよく分かっていない。韓国・CHA University School of MedicineのMan Y. Han氏らの研究グループは、糖尿病や高血圧などの家族歴が川崎病の発症リスクに及ぼす影響を検証。心血管疾患(CVD)の家族歴が川崎病の発症リスク上昇と関連していたとJ Am Heart Assoc(2022年; 11: e023840)に発表した。
韓国の約50万例が対象
今回の対象は、韓国で2008~09年に出生し出生コホート研究に登録された新生児91万9,707例のうち、生後54~60カ月時に実施されたスクリーニングに参加した49万5,215例。スクリーニング時の質問票により、高血圧、脂質異常症、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病の家族歴の情報を取得した。 26万9,609例にCVDの家族歴があり、傾向スコアマッチングにより、対象を心血管疾患(CVD)の家族歴がある群(CVD群12万2,669例)とCVDの家族歴がない群(対照群12万2,669例)に1:1で割り付けた。
主要評価項目は、CVD群における川崎病発症とし、川崎病の診断例は免疫グロブリン療法(IVIG)およびアスピリンを含む解熱薬の25日超の服薬を行った者と定義した。副次評価項目は、CVD群における重症川崎病とし、川崎病による合併症が1回以上、冠動脈造影また2回以上のIVIGを要する者と定義した。
0.61%が川崎病を発症
スクリーニングに参加した49万5,215例のうち、0.61%に当たる2,998例が川崎病を発症した。好発年齢は1~2歳で、10万人・年当たりの発症率は2歳未満で124.4(95%CI 117.5~131.5)、2~5歳では95.5(同90.5~100.4)、6歳以上では14(同12.6~15.6)だった。
傾向スコアマッチング後におけるCVD家族歴の内訳は、糖尿病33.9%、脳卒中8.3%、心筋梗塞6.9%、高血圧40.5%、脂質異常症2.6%で、CVD家族歴の保有数は1~2種が87.1%、3種以上が12.9%だった。
ベースライン時におけるマッチング後のCVD群と対照群の主な背景を見ると、男児がそれぞれ53.8%、51.4%、早産が6.8%、5.6%、母乳哺育が42.4%、43.7%などであった。
重症川崎病のリスク上昇は認められず
CVD群および対照群の川崎病発症数はそれぞれ1,734例、1,264例、マッチング後ではそれぞれ0.68%(829例)、0.56%(690例)で、主要評価項目のCVD群における川崎病発症リスク比(RR)は1.20(95%CI 1.08~1.32)と、CVD群における有意なリスク上昇が示された。
マッチング後における川崎病発症例1,519例のうち、副次評価項目の重症例は181例で、CVD群の12.3%(100例)、対照群の12.0%(81例)が該当し、CVD群における重症川崎病のRRは1.23(95%CI 0.92~1.65、P=0.158)とCVD家族歴による重症川崎病の有意なリスク上昇は認められなかった。 CVD群で川崎病発症のリスクが高いものの、重症川崎病のリスク上昇は見られないという結果は、CVDのうち脳卒中および心筋梗塞のみを抽出した解析や、CVD家族歴の保有数別に見た解析でも得られた。
研究グループは「今回の検討は、CVD家族歴が川崎病発症リスクと有意に関連したことを示した初めての研究である。川崎病の病因はいまだ不明なため、他のリスクだけでなくCVDの家族歴にも配慮する必要がある」とまとめた。
(編集部)