中国・Macau University of Science and TechnologyのXin Zhang氏らは、イコサペント酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といったω-3系の多価不飽和脂肪酸(以下、ω-3脂肪酸)の摂取による血圧値への影響について検討したランダム化比較試験(RCT)71件のメタ解析を実施。ω-3脂肪酸の摂取量と血圧値の間に非線形の関連が認められ、血圧低下におけるω-3脂肪酸の至適量は1日当たり2~3gであったとの解析結果をJ Am Heart Assoc2022; 11: e025071)に発表した。

71件中64件で魚油や藻油のカプセルを使用

 ω-3脂肪酸は心血管イベントのリスク低下との関連が複数のRCTで確認されている。一方、最近報告された臨床試験やメタ解析ではω-3脂肪酸の摂取による心血管イベントのリスク低下や、血圧値との間の有意な用量依存性の関連は示されていない。Zhang氏らは今回、血圧値に対するω-3脂肪酸(DHAとEPAのいずれか、または両方)の用量依存的な影響について検討するため、RCTのメタ解析を実施した。

 PubMedおよびEmbaseに2021年5月7日までに発表された文献を検索し、18歳以上の成人を対象に実施されたRCT 71件(計4,973例)のデータを解析に組み入れた。1日当たりのω-3脂肪酸の摂取量と血圧値の用量依存性の関連については、1段階の三次スプライン回帰モデルを用いて解析した。

 解析対象の1日当たりのω-3脂肪酸の平均摂取量は2.8g(範囲0.2~15g)、DHA単独では平均1.4g(同0~6g)、EPA単独では1.8g(同0~9g)だった。各RCTの平均年齢は22~86歳で、71件中56件は高血圧のない者を対象としていた。また、ほとんどのRCT(64件)でω-3脂肪酸の摂取源として魚油や藻類油などのサプリメントが用いられ、ω-3脂肪酸を食事(魚または魚油が添加された食品)から摂取する介入が行われたRCTは7件だった。介入期間は平均10週間だった。

高血圧や脂質異常症の患者では3g以上が有益な可能性も

 解析の結果、全体およびほとんどのサブグループにおいて、ω-3脂肪酸の摂取量と血圧値との間にJ字型の非線形の関連が認められた(図1)。また、収縮期血圧(SBP)値と拡張期血圧(DBP)値を低下させるための1日当たりのω-3脂肪酸の至適摂取量は2g〔SBP:-2.61mmHg(95%CI -3.57~-1.65mmHg)、DBP:-1.64mmHg(同-2.29~-0.99)mmHg〕から3g〔SBP:-2.61mmHg(同-3.52~-1.69mmHg)、DBP:-1.80mmHg(同-2.38~-1.23mmHg)〕の範囲であると推定された。

図1. ω-3脂肪酸の摂取量と血圧の変化

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 サブグループ解析では高血圧症患者、脂質異常症患者、45歳以上の群において、ω-3脂肪酸の摂取と血圧の間により強い、ほぼ線形の関連が認められた(図2)。

図2. 血圧別のサブグループにおけるω-3脂肪酸の摂取量と血圧の変化

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(図1、2ともJ Am Heart Assoc 2022; 11: e025071)

 以上に基づき、Zhang氏らは「血圧低下を目的としたω-3脂肪酸の至適摂取量は1日当たり2~3gと考えられる。また、心血管疾患リスクが高い集団では1日当たり3g以上摂取することで、血圧低下における追加のベネフィットを得られる可能性がある」と結論している。

(岬りり子)