カテーテルアブレーション(アブレーション)は、心房細動(AF)に対する有効な治療手段であるが、大規模な集団で長期の生命予後を評価した研究は少ない。オーストラリア・University of QueenslandのLinh Ngo氏らは、同国およびニュージーランドのアブレーション施行AF患者を長期に追跡した結果をEur Heart J Qual Care Clin Outcomes(2022年6月14日オンライン版)に報告。10年生存率は84.0%と高かった。

オーストラリアおよびニュージーランドの3万601例が解析対象

 今回の対象は、オーストラリアおよびニュージーランドの全国規模の入院データ登録例のうち、2008~17年にAFの診断を受けアブレーションを施行された18歳以上の患者。アブレーションがAF治療目的で行われたことを明確にするため、他の不整脈の二次診断を受けた者などは除外した。

 主要評価項目として全死亡、AFまたは心房粗動による再入院、AFアブレーションの再施行、カルディオバージョン(電気的除細動治療)の施行で評価し、副次評価項目は脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)による入院、心不全急性心筋梗塞、AF・心房粗動以外の不整脈(徐脈や頻脈、全ての心ブロック)、心臓デバイス(ペースメーカーまたは除細動器)の新規植え込みとした。

 対象期間に4万5,398例がAFの診断を受け、最終的に3万601例が選択基準を満たした。全体の主な患者背景は、平均年齢が62.7歳、65歳以上が46.1%、男性が70.0%と多く、アブレーションの94.0%が待機的で、49.1%がアブレーション施行日の前年にAFまたは心房粗動の診断を受け、入院機会があった。合併症は高血圧13.4%、糖尿病10.1%などと比較的頻度が低く、CHA2DS2-VAScスコアの中央値は1点、90.1%が2点以下だった。

1,900例が死亡、死亡例では併存症の有病率が高い

 12万4858.7人・年(中央値3.8年)の追跡期間中に1,900例が死亡した。生存例と比べ、死亡例では高齢(62.0歳 vs. 72.4歳)で、高血圧(12.3% vs. 30.5%)、心不全(9.0% vs. 28.9%)、冠動脈疾患(10.0% vs. 23.0%)、糖尿病(9.7% vs. 16.9%)の有病率や、CHA2DS2-VASスコアの中央値(1点 vs. 2点)が高かった(全てP<0.001)。

 3万593例が初回入院後に生存して退院し、うち1万1,114例が追跡期間中にAFまたは心房粗動で再入院した。非再入院例と比べて、再入院例では若く(63.3歳 vs. 61.5歳)、高血圧有病率が高く(12.9% vs. 14.2%)、アブレーション施行前年におけるAFまたは心房粗動による入院率が高かった(45.5% vs. 55.5%)。

 アブレーション後における100人・年当たりの全死亡は、1年時が1.2、1~5年時が1.5、5~10年時が2.0で、生存率は1年時が98.8%(95%CI 98.6~98.9%)、5年時が93.0%(同92.6~93.4%)、10年時が84.0%(同82.4~85.5%)だった。 AFまたは心房粗動で再入院した1万1,114例のうち、6,001例が再アブレーションを、4,811例がカルディオバージョンを受けた。再アブレーション率は、アブレーション後1年目が最も多く(100人・年当たり12.2)、5~10年では低下した(同1.7)。再アブレーションの10年累積施行率は28.1%(95%CI 27.2~29.0%)だった。カルディオバージョンも同様の傾向を示し、アブレーション後1年目が100人・年当たり10.6、5~10年では同1.6と低下し、10年累積施行率は24.4%(95%CI 21.5~27.5%)だった。

 他の心血管イベントについては、比較的頻度が低かった。脳卒中またはTIAによる再入院は100人・年当たり0.7で累積発生率は6.6%、心不全はそれぞれ0.7、8.5%、急性心筋梗塞は0.4、3.7%、失神による入院は0.6、4.3%、AFまたは心房粗動以外の不整脈による再入院は2.5、15.9%、ペースメーカーまたは除細動器の植え込みは2.0、14.5%だった。

 Ngo氏は「アブレーションを施行したAF患者において、10年生存率は84.0%と高く、脳卒中心不全となどのイベント発生率も比較的低かった」とまとめた。しかし、さらなるアブレーション後のAF抑制に向け、「体重や併存症の管理、節酒に取り組む必要がある」と述べている。

(編集部)