海外ブランド品や高級時計など、高額商品の好調な売れ行きが続いている。新型コロナウイルス禍で海外旅行に行けない代わりに、高額品を購入する人が増えたためだ。買い手の中心は中高年の富裕層だが、以前より目立つのは若者の存在。資産価値があることに加え、インターネット交流サイト(SNS)の影響で、ブランド品に魅力を感じる若者も多いようだ。
 6月の平日昼、東京・銀座にあるフランスの有名ブランド「シャネル」の店舗には、入店待ちの列ができていた。約50万円のバッグを購入したという30代の女性は、「ブランドが好き。旅行に行けないので日本で買っている」と話していた。
 松坂屋名古屋店(名古屋市)は6日、時計売り場を新装オープンした。人気の「ロレックス」は面積を約3倍に拡張。世界限定1本の1億8150万円の腕時計も登場した。緑や休憩スペースがあり、ゆっくりできる雰囲気だ。担当する長谷場和也部長は、「高級時計に興味を持つ若い方が増えている。若い方にも女性にも入りやすい環境にした」と話し、客層の開拓に意欲を示した。
 中高年の富裕層や法人顧客に向けて、高額商品を販売する百貨店の外商ビジネスにも変化が生じてきた。伊勢丹新宿本店(東京)の2021年度の外商顧客のうち49歳以下の購買額比率は、前年度より5.2ポイント上昇し、28.8%。三越伊勢丹の外商担当者は「若い経営者の方が増え、高級ブランド品などの需要が高い。店の対応の早さも評価され、口コミや紹介で外商顧客になる人が多い」と話していた。
 さらにSNSで影響力のある「インフルエンサー」がブランド品を使っているのを見て、購入する20代も少なくないという。5万~10万円の財布など、比較的手が届きやすい商品が増えたことも購入者の裾野を広げているようだ。
 日本百貨店協会によると、ブランドバッグなどを含む「身のまわり品」の5月の全国売上高は19年同月比で4.2%増、時計などの「美術・宝飾・貴金属」は28.0%増とコロナ禍前の水準を超えている。ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員は「今後、海外旅行ができるようになると日本人の(国内での)高額品消費は減るだろう。しかし、訪日外国人観光客と合わせれば全体として伸びる可能性もある」と話している。 (C)時事通信社