新型コロナウイルスの感染状況悪化を踏まえ、政府内で7日、今月前半を目指してきた新たな観光需要喚起策「全国旅行支援」の開始を延期すべきだとの声が強まった。政府は10日の参院選投開票後に開始の可否を判断する。一方、経済社会活動を停滞させないため、「まん延防止等重点措置」適用などは回避したい考えだ。
 首相は7日の参院選の街頭演説で、これまでほぼ毎回「近々展開する」などとアピールしていた全国旅行支援に一切触れなかった。神戸市の演説では、観光産業について「復活へ期待が高まるが、最大限の警戒をしっかり維持しながら(支援を)丁寧に進めていく」と語った。
 全国旅行支援は代金割引とクーポン券を合わせて1人1泊最大1万1000円を支援する事業。首相は6月15日の記者会見で「7月前半より実施する」と表明したが、コロナの新規感染者が6月下旬から増加に転じたため、政府は開始の判断を参院選後に先送りした。
 増加ペースは加速しており、首相官邸関係者の一人は「状況は厳しい」と指摘。別の官邸関係者は「恐らく今月前半にはできない」と語った。
 全国旅行支援は「Go To トラベル」と違い、各地の感染状況に応じて、都道府県が実施を判断する。病床使用率は低い水準にあり、全国旅行支援を開始しても問題はないとの見方もある。首相は来週、専門家会議の意見も踏まえて最終判断する意向だ。
 一方、政府はまん延防止等重点措置や緊急事態宣言は極力避けたい考えだ。木原誠二官房副長官は7日の会見で「現時点では都道府県から重点措置の要請はなく、重点措置の適用等の行動制限を行うことは考えていない」と語った。 (C)時事通信社