Flash Glucose Monitoring(FGM)とも呼ばれる間歇スキャン式持続グルコースモニター(isCGM)FreeStyleリブレの長期使用が、成人糖尿病患者のメンタルヘルスを改善する可能性が示された。オランダ・University of GroningenのJulia J. Bakker氏らは、糖尿病患者の日常生活に対するFreeStyleリブレの効果を検討した前向き観察研究FLARE-NLの参加者674例を対象に事後解析を実施。その結果、12カ月間の使用後に抑うつ性障害を有する患者の割合が有意に低下し、精神的健康度を示すスコアが有意に改善したとBMJ Open Diab Res Care2022; 10: e002769)に発表した。

12カ月間使用後のメンタルヘルスの変化を検討

 2型糖尿病患者におけるうつ病の有病率は28%という報告があり、うつ病を合併する糖尿病患者では血糖コントロールが不十分で微小血管・大血管の合併症発生率が高いことが問題となっている。

 そこでBakker氏らは、FreeStyleリブレの長期使用と抑うつ性障害との関連を事後解析で検証した。解析対象は、FreeStyleリブレを12カ月使用しベースライン、使用開始後6カ月および12カ月時点で健康関連QOLの質問票12-Item Short Form Health Survey version 2(SF-12v2)に回答した674例(平均年齢48.2歳、男性51.2%、1型糖尿病78.2%、ベースラインのHbA1c 7.9±1.2%)。精神的健康度を示すSF-12v2の精神的サマリースコア(MCS)45以下を抑うつ性障害と定義した。

 解析の結果、主要評価項目としたMCS 45以下の患者の割合はベースラインの34.9%から6カ月後には30.0%、12カ月後には25.7%へと有意に低下した(全てP<0.01)。

年齢とベースラインのMCSが関連

 平均MCSはベースラインの48.5から6カ月後には50.7、12カ月後には51.3へと有意に改善した(全てP<0.001)。改善は男女ともに認められ、ベースライン→6カ月後/12カ月後の平均MCSの変化は女性で47.1±10.4→48.9±9.8(P=0.03)/49.6±10.2(P=0.003)、男性で49.9±9.9→52.4±9.7(P=0.001)/52.9±9.2(P<0.001)だった。

 さらに、ベースラインでMCS 45以下だった患者に限定したサブグループ解析を行った結果、ベースライン→12カ月後の平均MCSは女性で36.9±6.0→43.6±10.4、男性で37.0±6.0→45.2±9.2と有意に改善していた(全てP<0.001)。

 多変量回帰分析の結果、12カ月使用後のMCSの改善と有意な関連が認められた因子として、年齢(標準偏回帰係数β-0.17、95%CI -0.29~-0.07、P=0.001)およびベースラインのMCS(同-0.50、-0.60~-0.39、P<0.001)が抽出された。

 1型糖尿病患者の精神的苦痛は、低血糖出現への恐怖と関連しているといわれる。FreeStyleリブレの使用により低血糖への恐れが減ることが、患者の幸福度にポジティブな影響をもたらす鍵を握るとされている。MCSの改善はFreeStyleリブレの使用開始後に血糖コントロールが改善するとともに、低血糖への恐怖による悪影響が軽減されたことを示唆している。

 以上を踏まえ、Bakker氏らは「抑うつ性障害を合併する糖尿病患者では、FreeStyleリブレの長期使用によりメンタルヘルスが改善する可能性がある」と結論している。

(太田敦子)