英・University of OxfordのJonathan L. Rees氏らは、過去20年間の同国における関節鏡下肩手術のデータを解析。その結果、重篤な有害事象の発生率は低いが、一定数発生するとBMJ2022; 378: e069901)に報告した。中でも1年以内の再手術は26人に1人と高率に発生したという。

28万8,250件を検討

 過去20年間に関節鏡下手術は増加しており、特に膝と肩に対するものが急増している。一般的な関節鏡下肩手術には、腱板縫合術、拘縮肩に対する関節包切離術などがあるが、リスクに関する正確なデータは不足している。そこでRees氏らは、過去20年間の英国における関節鏡下肩手術のデータを解析し重篤な有害事象リスクについて検討した。

 英国保健サービス(NHS)の入院患者データと英国統計局の死亡データから、2009年4月1日~17年3月31日に関節鏡下肩手術を施行した16歳以上の患者26万1,248例、関節鏡下肩手術28万8,250件(鏡肩峰下除圧術10万3,211件、腱板縫合術7万1,281件、鎖骨遠位端切除術7万2,614件、拘縮肩関節包切離術2万741件、肩関節固定術2万403件)を検出、重篤な有害事象リスクを推計した。

 主要評価項目は、術後90日以内の入院治療を必要とする重篤な有害事象(死亡、肺塞栓症、肺炎、心筋梗塞、急性腎障害、脳卒中、尿路感染症)の発生率。副次評価項目は術後90日以内の各有害事象の発生率、術後1年以内の再手術率とした。

術後90日以内の有害事象発生率は1.2%

 解析の結果、術後90日以内の入院治療または再手術を必要とする有害事象の発生率は1.23%(95%CI 1.19~1.27%)で、81例に1例発生した。有害事象の発生率は関節鏡下手術の種類によって異なり、肩関節固定術における0.64%(同0.54~0.76%)から拘縮肩関節包切離術における1.65%(同1.48~1.83%)までの幅が見られた。ただし年齢、性、併存症を調整すると、明らかな群間差は認められなかった。

 術後90日以内の死亡率は、0.05%(95%CI 0.04~0.06%)と低かった。

 術後90日以内の有害事象発生率は、肺炎で最も高く(0.33%、95%CI 0.31~0.35 %)、303例に1例発生し、肺塞栓症で最も低く(0.07%、95%CI 0.06~0.08%)、1,428例に1例発生した。

 術後1年以内の関節鏡下手術と有害事象の関係を見ると、手術の種類と死亡に関連は見られなかった。各有害事象の発生率は術後30日以内が最も高く、経時的に低下して術後90日にはベースライン時の値になった。

拘縮肩関節包切離術で再手術高頻度

 術後1年以内の再手術率は全体で3.82%(95%CI 3.75~3.90%)、26例に1例発生した。手術の種類によって差が見られ、肩関節の安定化で最も低く2.73%(同2.50~2.98%)、37例に1例発生し、拘縮肩関節包切離術でも最も高く5.71%(同5.37~6.07%)、18例に1例発生した。Rees氏らは「拘縮肩関節包切離術で特に再手術率が高かったのは、まだ病態が十分に理解されておらず、効果の予測が難しいことが原因と考えられる」と指摘した。

 深部感染に対する手術発生率は全体では0.09%(95%CI 0.08~0.10%)、1,111例に1例の発生と低かったが、種類別に見ると腱板縫合術後で0.19%(同0.16~0.23%)、526例に1例とリスクが高かった。

 試験期間中に肩峰下除圧術の施行数は減少したが、それ以外の関節鏡下肩手術の施行数は増加していた。

 以上から、同氏らは「解析の結果、一般的な関節鏡下肩手術に関連する重篤な有害事象リスクは低かった。しかし、1年以内の再手術が26例に1例で見られるなど、重篤な有害事象は一定数発生することが分かった」と結論。

 整形外科医でフィンランド・University of HelsinkiのTuomas Lähdeoja氏と同国・Hospital NovaのTeemu Karjalainen氏は、同誌の付随論評(2022; 378: o1571)で「最近の関節鏡下肩手術に関する臨床試験において、ほとんどの患者で非外科治療に比べ有効という結果は得られていない。もし関節鏡下肩手術を継続するならば、手術が有効な患者と病態を明らかにするために質の高い研究を行う必要がある」と指摘している。

(大江 円)