サルコイドーシスは多臓器に原因不明の炎症が生じる肉芽腫疾患で、厚生労働省が指定する難病の1つである。うち心臓に発現するものを心臓サルコイドーシス(CS)と呼び、心不全や致死性不整脈を引き起こす。比較的まれな疾患なため、国内外とも小規模なデータしか存在せず、CS患者の実態は明らかでなかった。北里大学循環器内科学の鍋田健氏らの研究グループは、CS患者が対象の多施設後ろ向きレジストリデータを検証。心イベント発生率および心イベントとの関連因子などの結果をEur Heart J2022年7月4日オンライン版)に発表した(関連記事「日本発・世界最大の心サルコイドーシス研究 多施設後ろ向きレジストリILLUMINATE-CS」)。

心イベントは経過中に高頻度に生じ、特に不整脈イベントが多数占める

 同レジストリはCS患者の特性および経過に関するデータを集約、解析し、臨床像や予後、予後予測因子、心イベントとの関連因子を調査することを目的に、国内33施設が参加して行われた。

 対象は、2001~17年にCSと新規に診断された512例(男性183例、女性329例、平均年齢62歳)。現在の診断基準である日本循環器学会(JCS)『2016年版 心臓サルコイドーシスの診療ガイドライン』または米国不整脈学会(HRS)「2014年版 心臓サルコイドーシスに関連する不整脈の診断と管理におけるエキスパートコンセンサスステートメント」に基づき診断された。

 検討の結果、CSの診断のきっかけとして最も多かったのは心臓超音波検査での異常所見で、心臓MRIやFDG-PETの初見からは、CSの好発部位として心室中隔基部および中部が抽出された。

 次に診断後の経過について、複合心イベント(全死亡、致死性不整脈〔心室細動・持続性心室頻拍・植え込み型除細動器(ICD)の適正作動〕、心不全による入院)の発生率を調べた。中央値で1,042日の追跡期間中〔四分位範囲(IQR)518~1,917日〕に148例で複合心イベント(全死亡49例、致死性不整脈イベント99例、心不全による入院56例)が発生した。イベント発生率は、5年で31.0%、10年では48.1%と高頻度であった。

 特に致死性不整脈は他のイベントの約2倍の頻度で発生しており、CS治療において致死性不整脈への対応が重要であることが明らかになった(図-左)。また多変量解析の結果、心イベントの独立した関連因子として、診断時のB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)高値、左室駆出率低値、心室細動・持続性心室頻拍の既往、CS診断後の心室性不整脈に対するアブレーション治療が、抽出された(図-右)。

 図. CSにおける各イベントの発生率と予測因子

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(図、北里大学プレスリリースより)

 以上を踏まえ、研究グループは「大規模レジストリデータの解析から、CS患者では想定以上に心イベントが発生しており、特に致死性不整脈の頻度が高いこと、心イベントには4つの因子が独立して関連することなどを明らかにした」と結論。「CSの臨床像、予後、心イベント関連因子が明確化したことで、今後はさまざまな角度から解析を行うと同時に今回の成果を基に診断、治療の開発につなげていきたい」と述べている。

(小野寺尊允)