岸田文雄首相は11日の記者会見で、参院選で国民の信任を得たとして、山積する諸課題の解決に全力を挙げると表明した。具体的には新型コロナウイルス感染症、ウクライナ危機、物価高を列挙。今の日本は「戦後最大級の難局にある」として、「一つ一つ真剣勝負で、命懸けで取り組まなければならない」と決意を示した。
喫緊の課題となるのが、参院選でも争点となった物価高騰だ。5月の消費者物価指数は2カ月連続で前年同月比2%を超え、とりわけ生活必需品の値上がりが国民生活を直撃している。首相は選挙戦で、野党がこぞって掲げた消費税減税を「実行不可能」と切り捨て、地方創生臨時交付金を増額して公共料金などを補填(ほてん)すると訴えてきた。
会見では物価・賃金・生活総合対策本部を週内に開くと説明し、5.5兆円の予備費を「機動的に活用する」と強調。「必要に応じて適切なタイミングで次の経済対策も考えていく」と、秋の臨時国会に向け2022年度第2次補正予算の編成も示唆した。ただ、看板政策「新しい資本主義」の核心である賃上げの具体策には言及せず、「成長と分配は両方必要だ」と述べるにとどめた。
コロナの新規感染者数は参院選公示後に急増し、地方自治体からは「第7波に入った」(東京都)との指摘が相次ぐ。首相は、病床使用率は低水準にあるとして「平時への移行の道を慎重に歩んでいく」と重ねて表明。ワクチン・治療薬の活用や検査の拡大に取り組みつつ、経済社会活動と感染拡大防止の両立を図る考えを示した。
観光需要喚起策「全国旅行支援」に着手するかどうかは「今月前半」に判断するとしてきた。夏休みの行楽シーズンを前に全国の観光地の期待は高まるが、感染状況を悪化させ、行動制限のリスクも伴う難しい判断は目前に迫る。新たな感染症の流行に備えた感染症法改正や内閣感染症危機管理庁創設も中長期的課題だ。
ウクライナ危機の行方も不透明感を増す。日本を含む先進7カ国(G7)による経済制裁強化に反発したロシア政府は7月に入り、日本の商社も出資する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の事実上の接収に動きだした。電力需給が逼迫(ひっぱく)する猛暑の時期は既に到来しており、エネルギー安定供給も急を要する課題となる。
日中間では国交正常化50年の節目が9月29日に迫っているが、関係は冷え込んだまま。日韓関係も国交正常化後最悪と言われる状態を脱する見通しが立たない。北朝鮮による日本人拉致問題は前進の糸口すらつかめていない。
反撃能力(敵基地攻撃能力)の扱いが焦点となる国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定は年末に迫る。首相は会見で「内容と予算と財源は3点セットで考えなければいけない」と語った。だが、自民党が公約に盛り込んだ国内総生産(GDP)比2%の防衛費確保には新たに5兆円規模の財源が必要で、答えは容易に出せそうにない。
安倍晋三元首相が志半ばで倒れた憲法改正の行方も焦点だ。首相は会見で「安倍氏の思いを受け継ぎ、果たせなかった難題に取り組む」と表明。自民党が掲げる9条改正など具体的な改憲項目について、発議に必要な衆参各院の3分の2の結集を目指す考えを示したが、連立を組む公明党を含め、「改憲勢力」の思惑は一致していない。 (C)時事通信社
物価高・コロナ対応に決意=岸田首相、参院選後も難題山積【22参院選】

(2022/07/11 19:30)