新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて政府は新たな観光需要喚起策「全国旅行支援」の実施を先送りする方向となった。予定通り7月前半の開始を期待していた旅行関連業界では13日、落胆が広がった。支援先送りに伴う需要減少は限定的との見方があるが、自粛ムード拡大にもつながりかねず、各社は影響を測りかねている。
 国内のコロナ感染者数は6月下旬まで比較的落ち着いていたが、今月に入り再び急増。大手旅行会社の関係者は「最近になってツアーのキャンセルが増え始めた」と肩を落とす。JR北海道の綿貫泰之社長は13日の記者会見で、全国旅行支援について「今の情勢では延期の公算が大きい。夏の観光シーズンが(対象時期に)入らなくなることは残念だ」と語った。
 全国旅行支援では政府が実施している「県民割」の対象範囲を地域ブロック単位から全国に拡大し、支援額も1人1泊当たり最大7000円から同1万1000円に増額する。航空業界では「回復が弱い地方から首都圏への観光需要を押し上げるきっかけになる」と期待が強かっただけに、先送りは痛手となる。
 ただ、観光需要全体への影響は見通せない。JTBは7日発表した夏休みの旅行動向で、国内旅行者は延べ7000万人とコロナ感染前だった2019年のほぼ同水準に戻ると予想。全国旅行支援のプラス効果はほとんど織り込んでおらず、影響は限定的だと説明している。
 一方、日本旅行業協会の高橋広行会長は、政府の支援先送りによって「旅行そのものが感染拡大に直結するという印象を与えかねない」と自粛ムードが拡大することへの警戒感を隠さない。5月の大型連休では旅行者が増えたが感染者数の増加にはつながらなかったと高橋氏は指摘し、早期の実施を求めている。 (C)時事通信社