中国科学院/北京協和医学院のLiyun He氏らは、ランダム化比較試験(RCT)82件10万例超のシステマチックレビューおよびメタ解析により、DPP-4阻害薬と胆囊・胆道疾患リスクの関連を検討。DPP-4阻害薬はプラセボまたは非インクレチン薬と比べて胆囊・胆道疾患の複合リスク、胆囊炎のリスク上昇と有意に関連していた。またRCT 184件のネットワークメタ解析では、DPP-4阻害薬は、SGLT2阻害薬に比べて胆囊・胆道疾患の複合リスク、胆囊炎のリスクを上昇させた。詳細はBMJ2022; 377: e068882)に掲載された。

以前の後ろ向き研究ではリスク上昇示されず

 実臨床における2型糖尿病患者を対象とした以前の後ろ向き研究では、GLP-1受容体作動薬で胆囊・胆道疾患リスクの上昇が認められたが、DPP-4阻害薬との関連は認めなかった(関連記事「GLP-1アナログで胆管・胆嚢疾患リスク上昇」)。

 しかし、後ろ向き研究はさまざまなバイアスや交絡の余地があることから、He氏らはRCTのシステマチックレビューとメタ解析による検討を実施。GLP-1作動薬に関する結果は既に報告しており(関連記事「GLP-1作動薬で胆囊・胆道疾患リスク上昇」)、今回はDPP-4阻害薬における解析結果を報告した。

 同氏らは、PubMed、EMBASE、Web of Science、CENTRALに2021年7月31日までに掲載された論文を検索し、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体、SGLT2阻害薬と、プラセボまたは他の糖尿病治療薬を成人2型糖尿病において比較したRCTを解析に組み入れた。

 評価項目は、胆囊・胆道疾患の複合と、胆囊炎、胆石症、胆道疾患の個別リスクの評価とした。データの抽出・質的評価および統合は4人の評価者が個別に実施。各アウトカムに対するエビデンスの質はGRADE法により評価した。

ORは胆囊・胆道疾患複合1.22、胆囊炎1.43

 解析対象はRCT 82件・10万4,833例(女性39.7%、年齢、BMI、HbA1cの平均値はそれぞれ59.4歳、29.7、8.1%)で、ペアワイズメタ解析の結果、DPP-4阻害薬はプラセボまたは非インクレチン薬との比較において胆囊・胆道疾患の複合〔オッズ比(OR)1.22、95%CI 1.04〜1.43〕、胆囊炎(同1.43、1.14〜1.79)のリスク上昇と有意に関連していた。ただし、絶対リスク差は比較的小さく、胆囊・胆道疾患で1万人・年当たり11件(95%CI 2~21件)、胆囊炎で同15件(5~27件)の増加だった。胆石症、胆道疾患リスクとの関連は認められなかった。

 これらのリスクは、長期使用(26週以上)と有意な関連が見られ、胆管・胆囊疾患でOR 1.24(95%CI 1.04~1.48)、胆囊炎でOR 1.51(同1.17~1.95)だった。一方、26週未満の使用では関連は認められなかった。

SGLT2阻害薬と比べリスク上昇、GLP-1作動薬と同等

 RCT 184件のネットワークメタ解析の結果、DPP-4阻害薬は、SGLT2阻害薬との比較において胆囊・胆管疾患の複合(OR 1.32、95%CI 1.06~1.64)、および胆囊炎(同1.55、1.13~2.12)のリスク上昇と関連していた。一方、以前の知見と異なり、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬の比較ではリスクは同等だった。

 He氏らは「RCTのシステマチックレビューおよびメタ解析から、DPP-4阻害薬の使用は特に長期使用において胆囊炎リスク上昇との関連が示された」と結論。実臨床での治療期間はRCTより長い傾向にあることから「治療に当たる医師は、より注意する必要がある」と警鐘を鳴らしている。

(小路浩史)