米・Baylor University Medical CenterのLiza Johannesson氏らは、2016~21年の5年間に同国で子宮移植を受けた女性33例の平均36カ月に及ぶ追跡結果をJAMA Surg(2022年7月6日オンライン版)に発表した。レシピエントの移植時の平均年齢は31歳、94%(31例)が先天的に子宮がないロキタンスキー症候群(Mayer-Rokitansky-Kuster-Hauser syndrome)だった。64%(21例)が生体ドナーからの子宮移植で、ドナーとレシピエントの双方に死亡例はなかった。58%(19例)から生児21例が出生し、先天異常は検出されなかったという。
移植後1年時グラフト生存率は74%
米国ではBaylor University Medical Center、Cleveland Clinic、University of Pennsylvaniaが2016年2月~21年9月に33例の子宮移植を行っており、3施設の症例で世界の子宮移植の約半数、移植後の生児出産の半数超を占めている。Johannesson氏らは今回、33例のレシピエントとドナーを平均36カ月(範囲1~67カ月)追跡して母子のアウトカムを評価した。
レシピエントの移植時の平均年齢は31歳、平均BMIは24で、88%(29例)が白人、94%(31例)がロキタンスキー症候群、64%(21例)が生体ドナーからの子宮移植だった。ドナーの子宮提供時の平均年齢は、生体ドナーで37.7歳、死体ドナーで31.5歳だった。ドナー側にもレシピエント側にも移植後の死亡例はなかった。
主要評価項目とした移植後1年時点のグラフト生存率は74%(31例中23例)だった(2例は移植後1年未満のため評価対象から除外)。
腎移植など他の臓器移植に比べると低い値だったが、同氏らは「経験を重ねれば成功率が上昇し合併症発生率が低下すると予想され、例えば肝移植では1年生存率が1986年の66%から2015年には92%に上昇した。子宮移植においても同様の学習曲線が既に確認されている」と述べている。
1年グラフト生存例の生児出産率は83%
2021年10月までに少なくとも1回の生児出産に至った割合は全体で58%(33例中19例)、1年グラフト生存例における生児出産の割合は83%(23例中19例)だった。
計21例の生児が出生し、出生時の在胎期間の中央値は36週6日(範囲30週1日~38週)だった。新生児の63%(13例)は37週以前に出生し、うち2例は32週以前の早産児だった。出生体重の中央値は2,860g(範囲1,310~3,940g)だった。先天異常は検出されず、男女比は女児48%(10例)、男児52%(11例)で同等だった。
なお、子宮移植では卵管は移植しないため、事前に凍結保存した受精卵を移植後の子宮に戻す凍結胚移植(FET)が行われた。1年グラフト生存の23例に59回のFETが行われ、19例が少なくとも1人の生児を出産した。FET当たりの生児出産率は36%(59回のFETで21人出産)だった。これは、米国生殖補助医療学会の臨床アウトカム報告システム(SART-CORS)による35歳未満の女性におけるFET当たりの生児出産率41.3%に匹敵する値だった。
以上を踏まえ、Johannesson氏らは「米国における5年間の経験から、子宮移植は子宮性不妊症の女性の妊娠および出産を可能にする外科的治療であり、レシピエント、生体ドナー、生児の3者にとって安全な方法であることが示された」と結論している。
(太田敦子)