【バリ時事】15日に開幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、コロナ禍で膨らんだ開発途上国の債務問題をめぐり、日米欧が最大の貸し手である中国の責任を追及した。経済が混迷を深めるスリランカ以外にも危機が波及すれば、世界景気のさらなる減速は必至。ただ、中国は反発しており、国際協調の枠組みが機能不全に陥りかねない情勢だ。
 議長国インドネシアのムルヤニ財務相は開幕冒頭、世界的なインフレと商品価格の上昇、ウクライナの戦争という「三重の脅威」がドル建て債務を悪化させると強い懸念を示した。世界銀行によると、中低所得国が抱える対外債務残高は過去最大の約9兆3000億ドル(約1290兆円)に達する。
 先進7カ国(G7)は、途上国向けの多額融資で影響力を強める中国の経済圏構想「一帯一路」に矛先を向ける。相手国が公表していない「隠れ債務」は約3850億ドル(約53兆円)超とされる。中国を名指しで非難したG7首脳声明を踏まえ、イエレン米財務長官は「中国によるスリランカの債務再編に期待する」と訴えた。
 G20がコロナ下で合意した途上国債務再編の「共通枠組み」は停滞している。国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は「中国と民間金融機関が足かせになっている」と指摘するが、中国は「西側諸国による責任転嫁だ」(外務省報道官)と反論。融資情報の開示や債務負担の軽減には後ろ向きだ。
 バイデン米大統領は先月下旬、一帯一路に対抗するため、G7が途上国向けインフラ整備を後押しする「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」の発足を発表した。日米欧と中国の対立は、途上国債務での協調に暗い影を落としている。 (C)時事通信社