安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件では、新聞やテレビで事件前後の映像や写真が流され、現場にいた市民らの動画もインターネット交流サイト(SNS)で広まった。戦争や災害、テロなどの報道は「惨事報道」と呼ばれるが、専門家は「衝撃的な映像を繰り返し見るとストレスを高める」と指摘。つらいと感じたら視聴をやめるよう注意を呼び掛ける。
「日本トラウマティック・ストレス学会」では3月、ロシアのウクライナ侵攻を受けて惨事報道に触れる場合の注意点をまとめた。報道の必要性を示しつつも、心身に負担をかけないよう「惨事報道と関わる工夫が推奨される」とした。
具体的な注意点としては、同じ内容の報道を繰り返し見ないようにすることや、食事中にテレビを視聴する「ながら見」を避けるよう求めた。特にトラウマの体験者や精神疾患を抱える人、子供などはより注意が必要としている。
惨事報道とメンタルヘルスの関係をめぐっては、評論家の荻上チキさんが所長を務める一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」の調査で傾向が示されている。同法人は5月、ウクライナ侵攻に関するメディア視聴について、18~79歳の男女1000人にウェブアンケートを実施。報道に触れる時間が長いほど、抑うつ度や不安感が強まったという。特に民放の昼のワイドショーや国内の報道機関が運営するニュースサイトを見る人のストレスは増大していた。
目白大の重村淳教授(災害精神医学)は今回の事件を「誰でも知る存在が公衆の面前で殺害され、かつリアルタイムで追体験してしまったのは大きな特徴だ」と指摘。「心に与える影響は大きい。動揺したと感じたら、テレビやSNSを見ないようにしてほしい」と話した。 (C)時事通信社
動画視聴「つらい場合は離れて」=ストレス高める要因に―専門家呼び掛け・安倍元首相銃撃
(2022/07/16 14:25)