新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大が、医療サービスの利用に大きな変化をもたらしている。筑波大学医学医療系講師の濵野淳氏らは、COVID-19流行前後における在宅医療の利用状況の変化に関する初の全国的な調査を実施。結果をBMC Res Notes2022; 15: 238)に報告した。

国内31施設のアンケート結果を解析

 新型コロナウイルス感染者の入院対応が必要となり、各医療機関でCOVID-19以外に割り当てられるベッド数が制限された結果、訪問診療を含む在宅医療を希望する患者が増えていると想定される。しかし、COVID-19流行前後における比べた在宅医療の利用状況の変化や、その理由についての調査は行われていなかった。

 濵野氏らは、流行第五波に該当する昨年(2021年)8月に国内で訪問診療を行っている医療機関37施設の責任医師(院⻑や管理者)に対し、無記名のウェブアンケートを実施。COVID-19の流行前前後における在宅医療利用状況の変化の実態やその理由などを聞いた。

 33施設から回答が得られ、未入力項目があった2施設を除いた31施設の回答を解析した。そのうち14施設は人口10万人未満の地域にあり、9施設では医師1人体制で訪問診療が行われていた。

在宅での看取りや新たな訪問診療の希望が増加

 解析の結果、COVID-19流行前と比べた変化としては「自宅で最期を迎える患者が増えた」が74.2%と最も多く、「新たに訪問診療を希望する患者が増えた」が71.0%で続いた。訪問診療を希望する理由については「入院中の面会制限があるため」が93.5%で、「病院内での新型コロナウイルス感染を懸念」は41.9%にすぎなかった。

 この傾向は地域人口や診療所・クリニックの医師数による違いはなく、日本における一般的な傾向と考えられる。濵野氏らは「COVID-19流行前後で在宅緩和ケアの利用に差がなかったとする台湾のコホート研究(J Pain Symptom Manage 2020; 60: e1-e6)と異なり、日本ではCOVID-19流行後に在宅医療を希望する患者が増えていた。在宅医療従事者の支援や、入院中の面会制限について運用改善の検討が必要であることが示唆された」と結論している。

 なお、COVID-19流行前と比べて新たに訪問診療の希望者が増加した基礎疾患は、がんが51.6%と最も多く、呼吸器疾患が25.8%、認知症が22.6%で続いた。

(編集部)