米・Austin Research Center for RetinaのChirag D. Jhaveri氏らは、中心窩に及ぶ糖尿病黄斑浮腫(DME)の患者を対象に、安価な抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬ベバシズマブの適応外使用から開始し、効果不十分の場合に同薬のアフリベルセプトに切り替えるステップ療法の有効性をランダム化比較試験で検討。その結果、2年間の治療による視力の改善効果に関して、最初からアフリベルセプトを使用した単独療法群と有意差はなかったとN Engl J Med2022年7月14日オンライン版)に発表した。現在のDMEに対する標準治療法は抗VEGF薬の硝子体内注射だが、その費用の高さからステップ療法を要求する保険会社が増えているという。

ベバシズマブ開始後2年で70%が切り替え

 同試験では、米国の54施設でvisual-acuity letter score(範囲0~100文字、高スコアほど視力良好)による視力が24~69文字(スネレン視力表20/320~20/50相当)の成人DME患者270例(年齢中央値61歳、女性48%)、312眼を登録。最初からアフリベルセプト2.0mgを使用するアフリベルセプト単独群(158眼)と、ベバシズマブ1.25mgから開始しアフリベルセプト2.0mgに切り替えるベバシズマブ開始群(154例)にランダムに割り付けて1カ月間隔で硝子体内注射を行った。

 ベバシズマブ開始群では、12週以降にプロトコルで指定された改善を達成できなかった場合にアフリベルセプトへ切り替えることとし、治療開始後2年間で70%が切り替えた。

2年間の治療で視力改善効果に有意差なし

 主要評価項目とした治療開始後2年間の視力の平均変化量は、アフリベルセプト単独群が15.0±8.5文字、ベバシズマブ開始群が14.0±8.8文字で有意差はなかった(調整後群間差0.8文字、95%CI -0.9~2.5文字、P=0.37)。

 副次評価項目についても両群で差はなかった。

 治療開始後2年時点で10文字以上の視力改善を達成した割合は各群77%(調整後群間差-3%ポイント、95%CI -13~8%ポイント)、視力20/20以上の達成率は各群22%(同-1%ポイント、-11~8%ポイント)だった。

 治療開始後2年間の中心窩網膜厚の平均変化量は、アフリベルセプト単独群が-192±143μm、ベバシズマブ開始群が-198±160μmだった(調整後群間差-16μm、95%CI -39~7μm)。

アフリベルセプト単独療法は有害事象が多く費用26倍

 一方、アフリベルセプト単独群ではベバシズマブ開始群に比べ、重篤な有害事象(52% vs. 36%、P=0.05)および入院(48% vs. 32%、P=0.02)が有意に多かった。

 以上を踏まえ、Jhaveri氏らは「中等度の視力低下を呈する成人DME患者において、アフリベルセプト単独療法とベバシズマブから開始するステップ療法の間で2年間の治療による視力の改善効果に有意差はなかった」と結論。「硝子体内注射1回当たりの費用(メディケア償還額)は、ベバシズマブの70ドルに対しアフリベルセプトでは約26倍の1,830ドルに上ることから、ステップ療法により大幅な医療費削減が可能になる」と付言している。

(太田敦子)