非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のない者に対し、NAFLD患者では認知症リスクが38%高まることが示された。スウェーデン・Karolinska InstitutetのYing Shang氏らは、人口ベースの大規模マッチドコホート研究でNAFLDと認知症の関連を検討。結果をNeurology2022年7月13日オンライン版)に報告した。

65歳以上のNAFLD患者を解析

 NAFLDと認知症は高血圧、糖尿病、肥満など危険因子を共有するものの、両者に関連性については明らかでない。そこでShang氏らはNAFLDと認知症の関係および、心疾患と脳卒中を含む心血管合併症による影響を検討した。

 スウェーデンの1987~2016年の患者登録(NPR)システムから65歳以上の全NAFLD患者を同定し、対照として一般人口から性・年齢・居住地域をマッチングした非NAFLD患者を1:10(NAFLD群2,898例、対照群2万8,357例)で選出。認知症はNPRおよび死因登録から同定。NAFLDと認知症の関連を検討した。

 主な背景は、年齢中央値が70歳、73%が65~74歳、55.1%が女性。ベースライン時にNAFLD群のうち105例(3.6%)が肝硬変を発症していた。対照群に比べNAFLD群では代謝性疾患、心血管併存症、うつを有する割合が高かった(全てP<0.001)。

血管性認知症リスクは44%高い

 中央値で5.5年(NAFLD群4.6年、対照群5.6年)の追跡期間中に、NAFLD群の145例(5.0%、 11.5/1,000人・年)、対照群の1,291例 (4.6%、 7.9/1,000人・年)が認知症を発症した。

 対照群に対しNAFLD群では認知症リスクが86%高かった〔ハザード比(HR)1.86、95%CI 1.55~2.25〕。

 糖尿病、肥満、脂質異常症、高血圧を調整したCox回帰分析の結果、NAFLD群の調整ハザード比(aHR) 1.64(95%CI 1.29~2.07)で、脳卒中、心疾患、うつを調整するとリスクは低下したが、対照群に対するリスクは38%高かった(同1.38 、1.10~1.72)。

 一方、対照群に対しNAFLD群では血管性認知症リスクが44%(aHR1.44、95%CI 0.96~2.23、P=0.07)高かったが、アルツハイマー病リスクに有意差は認められなかった。

心疾患や脳卒中の併存でリスク上昇

 認知症リスクはNAFLDと心疾患が併存すると1.5倍に(aHR 1.50、95%CI 1.08~2.05)、NAFLDと脳卒中が併存すると2.6倍になった(同2.60 、1.95~3.47)。

 以上から、Shang氏は「大規模マッチドコホート研究により、NAFLDと認知症発症の関連が示された」と結論。「認知症の発症には、主に脳血管の損傷が関与している可能性がある。NAFLDと併存する心血管疾患を標的とした治療により認知症リスクを低下させられる可能性が示唆された。NAFLDは自覚症状がないため過小診断され、NAFLDと認知症の関係が過小評価されている恐れがある」と指摘している。

(大江 円)