新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染すると、急性心筋梗塞(AMI)や脳梗塞の発症リスクが高まる。韓国・National Health Insurance ServiceのYoung-Eun Kim氏らは、SARS-CoV-2感染後のAMIおよび脳卒中の発症にSARS-CoV-2ワクチン接種が及ぼす影響を検討する後ろ向きコホート研究を実施。その結果、2回のワクチン接種が非接種に比べ、感染後のAMIおよび脳梗塞の発症リスクを58%有意に低減させることが示されたと、JAMA2022年7月22日オンライン版)のLetterで発表した。

18歳以上のCOVID-19患者23万1,037例を対象に検討

 SARS-CoV-2感染後のAMIおよび脳梗塞の発症リスク上昇は、血栓症リスクの上昇に関連していることが示唆されている。SARS-CoV-2ワクチンは、感染および重症化の予防には有効だが、二次的な合併症の予防に対する有効性は不明である。

 そこでKim氏らは、韓国の全国新型コロナウイルス感染症(COVID-19)レジストリ(感染および予防接種)および国民健康保険公団のデータベースを用いて後ろ向きコホート研究を実施。SARS-CoV-2感染後のAMIおよび脳梗塞の発症状況を、ワクチン未接種者とmRNAワクチンまたはウイルスベクターワクチン2回接種者で比較した。

 対象は、2020年7月~21年12月に無症候性を含めCOVID-19と診断された18歳以上の成人23万1,037例。①COVID-19診断前3カ月の間にAMIまたは脳梗塞を発症した者、②COVID-19の再感染者、③ワクチン接種者のうちCOVID-19による入院が30日以上に及んだ者、④ワクチンの単回接種者、⑤2回目のワクチンを接種する前または接種後7日以内にCOVID-19に罹患した者―は除外した。観察期間は今年(2022年)3月31日までとした。

 主要評価項目は、COVID-19の診断後31~120日に発生したAMIによる入院と脳梗塞による入院の複合、副次評価項目はCOVID-19の診断後31~120日に発生したAMIによる入院、脳梗塞による入院とした。最初の30日間は、COVID-19との関連を判定するのが困難なため除外した。

傾向スコアの逆確率重み付け法で両群の患者背景の差が縮小

 観察期間中にCOVID-19と診断された23万1,037例のうち、2回のワクチン接種を終了したのは16万8,310例、未接種は6万2,727例だった。

 ワクチン未接種群に比べ接種群は年齢が高く、併存疾患が多かった。重症または致死的な症例の割合は低かった。傾向スコアの逆確率重み付け法により性、年齢、併存疾患などを調整したところ、ワクチン接種群と未接種群における年齢と併存疾患の差は縮小したが、COVID-19の重症度に関しては差が縮まらなかった。

 追跡期間の中央値は、ワクチン接種群で84日、ワクチン未接種群で90日だった。

ワクチン接種群でAMI、脳梗塞による入院の複合リスクが58%有意に低減

 ワクチン未接種群の31例、ワクチン接種群の74例が、COVID-19の診断から31~120日後に発生したAMIまたは脳梗塞により入院した。100万人・日当たりの入院発生はそれぞれ6.18、5.49だった。

 解析の結果、主要評価項目(AMIによる入院、脳梗塞による入院の複合)のリスクは、ワクチン未接種群に比べワクチン接種群で有意に低かった〔調整ハザード比(aHR)0.42、95%CI 0.29~0.62、P<0.001〕。

 また、AMIによる入院リスク、脳梗塞による入院リスクはいずれもワクチン未接種群に比べワクチン接種群で有意に低かった(AMI:aHR 0.48、同0.25~0.94、P=0.03、脳梗塞:aHR 0.40、同0.26~0.63、P<0.001)。

 Kim氏らは「①イベントの発生は診療報酬の診断コードに基づいて把握している、②診断が不正確な場合もある、③ワクチンの接種状況で患者背景に差があった、④ワクチンを接種するか否かの決定には複数の要因が影響し、その中には心血管疾患リスクに関連するものも含まれる、⑤未確認のバイアスが残っている可能性がある」と研究の限界点を示した上で、「SARS-CoV-2ワクチンの2回接種により、COVID-19罹患後のAMIおよび脳梗塞リスクが低減することが示された。特に心血管疾患の危険因子を有するケースでは、ワクチン接種が勧められる」と結論している。

(比企野綾子)