しばしば女性の生活の質に大きな影響を及ぼす月経困難症(月経痛)の治療では、一般的に経口鎮痛薬が用いられる。しかし、長期の服用は副作用の懸念があることから、食事やサプリメントを用いた代替療法への関心が高まっている。東北大学病院婦人科学分野の横山絵美氏らは、魚に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やイコサペント酸(EPA)の抗炎症作用に着目。環境省が2011~14年に実施した「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを用いて、産後女性における魚の摂取頻度と中等度以上の月経痛との関連を調査した結果から、魚の摂取頻度が高い人ほど産後の月経痛が軽いことが示されたとPLoS One(2022; 17: e0269042)に報告した。

産後1.5年時、「中等度以上の月経痛」は28.1%

 同調査の対象は、エコチル調査の全国データのうち宮城ユニットセンターに登録された経産婦2,060人(平均年齢31.9歳)で、産後1.5年時に質問票を用いて行われた。

 まず、産後1.5年時の月経痛の重症度について、対象者の個人の裁量に基づき、重度、中等度、軽度、無痛の4段階で評価してもらった。その結果、重度が3.7%、中等度が24.4%、軽度が53.7%、無痛が18.2%だった。

 次に、魚の摂取頻度と月経痛の重症度について調査した。その結果、中等度以上の月経痛の女性の割合は魚の摂取頻度が週1回未満で38.0%、週1回で26.9%、週2~3回で27.8%、週4回以上で23.9%だった()。

図. 産後1.5年時の魚の摂取頻度と月経痛の重症度

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(東北大学プレスリリースより)

 さらに、産後1.5年時の魚の摂取頻度と中等度以上の月経痛があるリスクを多重ロジスティック回帰分析で評価した。年齢、BMI、喫煙率、飲酒歴、子宮筋腫子宮内膜症などの婦人科疾患の既往症、本人とパートナーの学歴や収入など社会経済的要因などを調整した結果、魚の摂取頻度が週1回未満の中等度以上の月経痛のリスクを1とした場合、週1回でオッズ比(OR)0.59(95%Cl 0.41~0.86)、週2~3回でOR 0.64(同0.45~0.90)、週4回以上でOR 0.52(同0.34~0.80)だった()。

図. 産後1.5年時の魚の摂取頻度と中等度以上の月経痛のリスク

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(東北大学プレスリリースより)

 これにより産後1.5年時において、魚の摂取頻度は中等度以上の月経痛に関連し、摂取頻度が高いと中等度以上の月経痛のリスクが有意に低くなることが示された(P<0.02)。

DHAやEPAの抗炎症作用が影響か

 近年、魚に含まれる成分のDHAやEPAは炎症性の痛みの原因となるプロスタグランジンの作用を減少させる効果があるとの報告がある。

 横山氏らは「魚の摂取頻度が高いと中等度以上の月経痛が少ない傾向が見られた背景として、DHAやEPAをはじめ、ビタミンDやビタミンEなどの栄養素が月経痛に予防的に働いたことが推測される。今回の研究結果から、産後の女性が魚を一定量摂取することで、月経痛を軽減できる可能性が考えられる」と結論した。

 また、「本研究は横断的な検討であり、長期的な予防効果については未解明のため、今後さらに調査を進める予定だ」と付言した。

(植松玲奈)