パーキンソン病(PD)患者では、運動症状に加え、嗅覚障害や認知機能障害などの非運動症状が認められる。また、認知機能障害にはアセチルコリン神経の傷害が関与することから、国立病院機構仙台西多賀病院脳神経内科医長の馬場徹氏らは、PD患者に対するコリンエステラ−ゼ阻害薬ドネペジル投与の認知症発症予防効果を検討する多施設共同プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験DASHを実施。結果をEClinicalMedicine2022; 51: 101571)に発表した。

PD患者201例、4年間のPDD発症を比較

 PDでは、振戦や筋固縮、無動、姿勢反射障害などの運動症状だけでなく、嗅覚障害やレム睡眠行動障害、認知機能障害などの非運動症状が認められる。中でも、認知機能障害にはアセチルコリン神経の傷害が関与しているという。そこで馬場氏らは、アセチルコリンの加水分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害し、アセチルコリン濃度を高めてコリン作動性神経の神経伝達を促進するドネペジルの早期投与による認知症を伴うPD(PDD)の発症予防効果を検討した。

 対象は、PD診療の専門21施設で2013年3月〜14年4月に登録した重度の嗅覚障害を有するPD患者201例。年齢が55〜75歳で、PD発症年齢が40歳以上、Hoehn-Yahrの重症度スケールⅠ〜Ⅲ度、スティック型嗅覚同定能力検査法4点以上などを組み入れ条件とした。なんらかの神経的および心理的障害を有する患者は除外した。

 201例をPDの標準治療であるドパミン補充療法に加え、ドネペジルを投与する群(103例)とプラセボ群(98例)にランダムに割り付けた。主な患者背景は、平均年齢は両群とも67.9歳、男性がドネペジル群62.1%、プラセボ群58.2%、PDの平均罹病期間がそれぞれ6.9年、6.7年。また、ドネペジルの投与量は1〜2週目が3g/日、3〜208週目が5g/日。6カ月置きにPDDを評価し、4年間のPDD発症割合を比較した。

PDD発症予防効果は示されず

 4年間の追跡期間中のPDD発症は、プラセボ群の12例(12.2%)に対しドネペジル群では7例(6.8%)と低かった。しかし、Cox比例回帰モデルによりPDD発症のハザード比(HR)を求めたところ、両群に有意差は示されなかった(HR 0.61、95%CI 0.24〜1.55、P=0.30)。

 一方、208週目の認知機能評価(ACE-Rスコア)および臨床認知症評価(CDRスコア)は、いずれもプラセボ群に比べドネペジル群で有意に良好だった(全てP<0.005)。また、運動症状および非運動症状の総合的評価(MDS-UPDRS)についても、プラセボ群に比べドネペジル群で便秘、めまい、疲労感などの非運動症状が軽減していた。

 以上から、馬場氏らは「重度嗅覚障害を持つPD患者に対する4年間のドネペジル投与にPDD発症予防効果は認められなかったが、認知機能障害を含む非運動症状の改善効果が示唆され、忍容性も良好だった」と結論。「PDDの高リスク患者に限定した解析を追加し、効果的なPDD予防策を追究したい」との見解を示している。

編集部