日本小児科学会は7月21日、フッ素入り子供用歯磨き粉の誤食による急性フッ素中毒疑いに関する傷害速報を発表した(日本小児科学会雑誌 2022; 126: 1098-1100)。1歳5カ月の男児が自宅で嘔吐し、嘔吐物に歯磨き粉が少量含まれていたことから、誤食による急性フッ素中毒が疑われた。同学会子供の生活環境改善委員会は、再発予防策として養育者への注意喚起に加え、製造業者に対しより安全な製品表示とチューブ素材開発などを訴えている。

誤食が疑われたら牛乳、アイスクリームの摂取を

 報告書によると、昨年(2021年)10月の早朝に男児が自宅で3回嘔吐し、嘔吐物に歯磨き粉が含まれていたこと、買ったばかりの歯磨き粉が減っていたことから誤食が疑われたという。歯磨き粉は男児の兄(2歳)が使用後に高さ約80cmの洗面台に置いたままにしており、男児が椅子に乗って取り、誤食したとみられる。

 男児は入院したが、血液検査や画像検査で異常が見られず、飲食物の摂取が可能なことが確認されたため2日目に退院した。フッ素入り歯磨き粉の誤食によりフッ化物と胃酸が結合しフッ化水素が形成され、胃粘膜を刺激したことによる急性消化器症状と考えられた。

 フッ素は自然界に広く分布する元素で、耐酸性、抗菌作用、再石灰化の促進などを目的として多くの歯磨き粉に配合されている。通常の使用方法では中毒症状は起きないことが確認されているが、一度に大量のフッ化物を摂取すると中毒に至る場合がある。摂取フッ化物量(mg)はフッ素濃度(%)×使用量(g)×10で表される〔フッ素濃度(%)=ppm×0.0001〕。フッ素量として2~5mg/kgで悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状が出現し、5~10mg/kgで不整脈発生の可能性がある。致死量は32~64mg/kgとされる。

 国内で販売されている子供用フッ素入り歯磨き粉はいずれもフッ素濃度が低いため厳密な濃度表示義務はなく、対象年齢が設定されていない製品が多いという。今回の症例の対象製品の使用開始目安は「口をすすぐことができる年齢」であった。誤食が疑われる際は、カルシウムを多く含む牛乳やアイスクリームなどを摂取することを勧めており、胃内でフッ化カルシウムが形成され胃粘膜への刺激が防げるとしている。

 子供用フッ素入り歯磨き粉の誤食防止について日本小児科学会は、①養育者による誤食事故防止のための環境整備、②医療者から養育者へのフッ化中毒に関する情報の提供、③誤食に関する注意喚起表示の記載、④子供の力で大量に中身を出せないチューブ素材の開発―を求めている。

(編集部)