新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックが現在、第七波と称される状態にある一方で、国内でCOVID-19の流行が始まった2020年2月以降、インフルエンザウイルス感染者の報告数は急速に減少している。しかし日本感染症学会インフルエンザ委員会は7月26日、2022~23年シーズン(今シーズン)におけるインフルエンザ対策に関する提言を発表し、2021年後半~22年前半にかけて北半球における多数の国でインフルエンザの小ないし中規模の流行が確認されていることに言及。今秋から今冬にかけて、日本でも同様の流行が起こる可能性があるため、インフルエンザワクチンの接種やCOVID-19とインフルエンザの鑑別が重要になると訴えている(関連記事「今冬のインフルエンザ動向を「超」早読み」)。

A(H3N2)香港型に注意

 提言によると、2021~22年、欧米では主としてA(H3N2)香港型インフルエンザウイルスの流行が見られており、中国も今年に入ってからは同型が増加しているという。また、オーストラリアで2022年度に検出されたインフルエンザウイルスのうち、サブタイプが判明したものの約80%はA(H3N2)香港型であった。

 これらの点から、今シーズンは日本でもA(H3N2)香港型インフルエンザウイルスの流行が主体となる可能性があるとしている。

 なお、A(H3N2)香港型インフルエンザウイルスはヘマグルチン(HA)抗原に変異が起こるため、ワクチン効果(ワクチン未接種者における発症に比べ、ワクチン接種者において発症が減少する割合)が低下し、特に免疫能が低下している高齢者ではその影響が顕著であることが知られている。

ワクチンによる高齢者の入院防止率は4割

 今シーズンに流行が予想されるA(H3N2)香港型インフルエンザウイルスに対するワクチンの発症防止効果は未知だが、発症してもワクチンによる一定の重症化防止効果は期待でき、65歳以上の高齢者において同ウイルスの感染による入院防止率は37%であったと報告されている(Vaccine 2017; 35: 4298-4306)。

 こうした点に鑑み、同委員会は「COVID-19発症者の再増加が続いてる日本においては、ワクチンで予防できる疾患については可及的に接種を行い、医療機関への患者の受診を抑制し医療現場の負担を軽減することが重要」と指摘。「今シーズンも例年通り、接種できない特別な理由のある場合を除き、小児や妊婦も含めできるだけ多くの人にインフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨する」と述べている。

重症インフルエンザによる成人入院患者のうち約1割は65歳未満かつリスクなし

 さらに、発熱患者への外来診療については、ワクチン接種歴にかかわらずCOVID-19とインフルエンザの鑑別が重要であり、両者を合併している可能性も念頭に入れてPCR検査、抗原検査、迅速診断などによる確定診断が求められると強調。検査の進め方は、同学会の提言「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて」や、厚生労働省作成「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」を参照すべきであるとしている。

 加えて、インフルエンザの治療に関しては、「重症化リスクを持たない患者でも重症化することがあり、その予測は困難である」と注意を喚起。日本で実施したサーベイランスによると、インフルエンザに罹患して重症化した成人の入院患者のうち、9.0%が65歳未満で重症化リスクがなかったとの知見を提示し(J Infect Chemother 2022; 28: 853-858)、抗ウイルス薬による治療を検討するべきであるとの見解を示した。

(陶山慎晃)