大脳白質病変は加齢に伴い進行するが、その程度が高度な高齢者では脳卒中や認知機能低下などのリスクが高いことが先行研究で示唆されている。住民ベースの研究を横断解析したところ、閉経後の女性では、同年代の閉経前の女性や男性と比べて白質病変の程度が高度であったとする研究結果を、ドイツ・神経変性疾患センター (DZNE)のValerie Lohner氏らがNeurology2022年6月29日オンライン版)に発表した。

30~95歳の男女3,410例を解析

 脳MRI画像で白質高信号域(WMH)として描出される白質病変は、加齢に伴い進行する。高度の白質病変は脳卒中アルツハイマー病、認知機能低下などのリスク上昇に関連していること、また高齢者の白質病変には性差があることが複数の研究で示されている。しかし、より若年層における白質病変の程度および加齢変化、高血圧や閉経が白質病変に及ぼす影響にも性差があるか否かについては解明されていなかった。

 Lohner氏らはこれらの性差に加え、生涯を通じてWMH量に年齢依存性が見られるかどうかを検討するとともに、閉経による影響についても明らかにするため、ドイツの住民ベースの研究Rhineland Studyのデータを用いて横断解析を実施した。

 解析対象は、同研究に参加し脳MRI検査を受けた30~95歳の3,410例(平均年齢54.3歳)。女性1,973例(57.9%)中1,1167例が閉経後だった。WMHの定量的評価にはT1強調画像、T2強調画像、FLAIR画像を用いた。

高血圧のある女性もWMH量が多い

 年齢、高血圧糖尿病などの血管危険因子を調整して解析した結果、閉経後女性では同年代の男性と比べてWMH量が多かった。45歳以上における平均WMH量は、男性の0.72mLに対して閉経後女性では0.94mLであった。また、WMH量は加齢に伴い増加し、増加速度は男性と比べて女性で速いことが示された。

 一方、閉経前女性と同年代の男性にWMH量の差は認められなかった。また閉経後女性では、同年代の閉経前女性と比べてWMH量が多かった。この他、閉経の状態を問わず、コントロール不良の高血圧を有する女性では、同年代の男性と比べてWMH量が多かった。

 以上から、Lohner氏らは「閉経後女性では、同年代の閉経前女性および男性と比べてWMH量が多いことが示された。一方、コントロール不良の高血圧がWMHに及ぼす性特異的な影響に閉経は関連していなかった」と結論。その上で「今後、さらなる研究で閉経に関連する生理学的変化について検討する必要がある。それによって脳小血管病の進行に関わるメカニズムの解明が進む可能性がある」と述べている。

(岬りり子)