反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法は、日本では2019年に中等症以上の薬物抵抗性うつ病を適応症として承認されたが、大脳皮質の神経軸索を規則的に刺激するという機序から、うつ病以外の精神疾患や疼痛、禁煙継続などへの有効性も期待されている。台湾・Asia UniversityのPing-Tao Tseng氏らはrTMS療法を含む非侵襲的脳刺激(NIBS)療法について、統合失調症の陰性症状に対する有効性と忍容性をネットワークメタ解析で検証。「NIBS療法と陰性症状の大幅な改善に有意な関係が認められた」とJAMA Psychiatry2022年6月22日オンライン版)に報告した(関連記事:「禁煙継続に有効、rTMSなどの脳刺激療法」)。

2021年12月までのRCTが対象

 統合失調症の症状は、主に①幻覚や妄想などの陽性症状、②意欲低下や感情表出の減少などの陰性症状、③認知機能障害−の3つに分けられる。このうち、陰性症状は陽性症状以上に患者のQOLや社会生活に悪影響を及ぼすと考えられているが、有効な治療法は確立されていない。これまでの研究ではNIBS療法の陰性症状に対する有効性が示唆されていたが、治療法ごとの効果の違いは不明だった。

 そこで、Tseng氏らはThe ClinicalKey、Cochrance CENTRALなどのデータベースを用い、2021年12月7日までに発表された統合失調症患者へのNIBS療法について検討したランダム化比較試験(RCT)に関する文献を検索。陰性症状に対するrTMS療法、シータバースト刺激法、経頭蓋ランダムノイズ刺激法、経皮迷走神経刺激法、経頭蓋直流電気刺激法の有効性と忍容性を検討する目的でシステマチックレビューとネットワークメタ解析を実施した。主要評価項目は陰性症状の重症度の変化および忍容性(なんらかの理由による脱落率)とした。

陰性症状を有意に改善

 解析対象はRCT 48件・2,211例(平均年齢38.7歳、女性30.6%)。検討の結果、対側脳領域に対する他の抑制性刺激の有無にかかわらず、シャム刺激群と比べ左背外側前頭前野へのNIBS療法による陰性症状の有意な改善が認められた。

 シャム刺激群と比べたNIBS療法における陰性症状改善の標準化平均差(SMD)は、高精細経頭蓋ランダムノイズ刺激法が−2.19(95%CI −3.36〜−1.02)、間欠的シータバースト刺激法が−1.32(同−1.88〜−0.76)、陽極経頭蓋直流電気刺激法が−1.28(同−2.55〜−0.02)、高周波rTMS療法が−0.43(同−0.68〜−0.18)、超高周波rTMS療法が−0.45(同−0.79〜−0.12)だった。忍容性にシャム刺激群との有意差は認めなかった。

 以上の結果を踏まえ、Tseng氏らは「左背外側前頭前野に対するNIBS療法は、いずれも統合失調症患者における陰性症状の有意な改善との関係が認められた」と結論。その上で、「対象研究が少ないため、十分にデザインされた大規模RCTでの追加検証が必要である」と付言している。

(平山茂樹)