欧米を中心にサル痘ウイルスの感染拡大が止まらない。7月末時点で米国の感染者数はスペインを抜いて世界最多となり、スペイン、ブラジルでは死亡者が出ている。英・Guy's and St Thomas' NHS Foundation TrustのAatish Patel氏らは、ロンドンの重大感染症(HCID)センターで最初に確認されたサル痘患者197例のデータを集積し、特徴を検討した結果をBMJ2022; 378: e072410)に報告した。ほぼ全例が男性間性交渉者(MSM)であることに加え、直腸痛や陰茎浮腫、孤立性の皮膚病変、扁桃浮腫、皮膚病変が全身症状に先行する症例など、これまでサル痘ウイルス感染の典型とされていなかった新たな臨床的特徴が確認された。これらの特徴は、今回の世界的流行における他の症例集積研究の結果(関連記事『国内でも確認のサル痘、世界528例の臨床的特徴』)とも部分的に一致している。

13.7%が英国のサル痘の定義を満たさず

 これまで英国におけるサル痘ウイルス感染は、西アフリカから入国した感染者や、その直接接触者のみで確認されており、ヒト-ヒト感染は限定的だったが、今回の感染拡大は明らかに状況が異なる。

 Patel氏らは、2022年5月〜7月に南ロンドンHCIDセンターでPCR検査によりサル痘と確定診断した197例の症例を集積し、臨床的特徴を検討した。アフリカにおける従来の流行はワクチン未接種の幼児を中心に発生しているが、今回の症例は全例が男性で、年齢中央値は38歳(範囲21~67歳)、1例を除きゲイやバイセクシャルなどのMSMだった。

 英国健康安全保障庁(UKHSA)のサル痘ウイルス感染が強く疑われる症例の定義は、全身症状7項目のいずれかと皮膚粘膜病変を必須としている。今回、皮膚粘膜病変は全197例で認められたが、27例(13.7%)は受診時に全身症状が認められなかった。また、64例(38.5%)は皮膚粘膜病変の後に全身症状が発現した。現行の定義では、これらの患者は他の疾患と誤診される恐れがある。全身症状は発熱が61.9%と最も多く、次いでリンパ節腫脹が57.9%、筋肉痛が31.5%に認められた。

皮膚粘膜病変は性器、肛門周囲に偏向

 また従来の流行と異なり、直腸痛と咽頭痛、陰茎浮腫が高頻度に認められた(順に36.0%、16.8%、15.7%)。197例中20例(10.2%)が症状管理のために入院したが、最も多かった入院理由は陰茎浮腫と直腸痛だった。直腸痛を呈した患者うち、5例でMRIにより直腸炎が確認された。直腸穿孔、肛門周囲膿瘍が各1例に認められた。

 皮膚粘膜病変の発生部位は性器(56.3%)、肛門周囲(41.6%)に偏向しており、さらに27例(13.7%)が口腔咽頭症状を呈した。うち9例で扁桃紅斑、膿疱、浮腫、膿瘍が見られた。

 70例(35.9%)がHIVに感染しており、うち64例(91.4%)は抗レトロウイルス薬治療を受けていた。また、性感染症の検査を受けた患者のうち56例(31.5%)でなんらかの性感染症が見つかった。

 こうした非典型症状や病変部位の偏向に加え、患者の96%に最近の性的接触歴があったことから、Patel氏らは「性的接触により、まず局所にウイルスが感染した後で全身症状が進展し、皮膚病変の他の部位への拡散が起こったのではないか」と考察している。

孤立性病変や紅斑性丘疹なども

 他にも従来の流行と異なり他疾患と誤認されやすい臨床像として、孤立性病変(22例、11.2%)、ステージが異なる(polymorphic)皮膚病変の並存(70例、35.5%)、紅斑性丘疹(27例、13.7%)などが挙げられている。

 Patel氏らは「これらの知見は、ゲイやバイセクシャルといったMSMにおけるサル痘の新たな流行が、英国を含め同疾患が風土病でない国々で起こっている現状を裏付けている」と結論。早期診断と感染拡大の抑制に資するよう、従来のサル痘ウイルス感染と異なる臨床経過や臨床症状の存在を周知すべきであると提案している。

(小路浩史)

  • 皮膚粘膜病変、発熱、頭痛、倦怠感/嗜眠、筋肉痛、関節痛、背痛、リンパ節腫脹