スウェーデン・Örebro UniversityのErik Stenberg氏らは、1度肥満(BMI 30~35未満)の患者に対するスリーブ状胃切除術の有効性と安全性を全国レベルのマッチドコホート研究で検証した。その結果、集中的な生活習慣改善療法と比べて体重減少、糖尿病の新規発症予防および寛解達成の効果が大きかった一方、物質使用障害および自傷のリスクが8割以上高かったとJAMA Netw Open2022; 5: e2223927)に発表した。

1年後の体重減少量は生活習慣改善の約2倍

 解析対象は18歳以上の成人1度肥満患者。まず、Scandinavian Obesity Surgery Registryから2012~17年にスリーブ状胃切除術を受けた切除群1,216例(平均年齢42.4歳、女性89.7%、平均BMI 32.8)を抽出。次に、Itrim health databaseから同期間中に集中的な生活習慣改善療法を受けた患者を抽出し、傾向スコアを用いて1:2でマッチングした2,432例(同42.6歳、90.1%、32.9)を対照群として設定した。

 切除群(ベースラインの平均体重92.8kg)は対照群(同92.2kg)と比べて介入後1年時点の体重減少量が約2倍で(22.9kg vs. 11.9kg、平均差10.7kg、95%CI 10.0~11.5kg、P<0.001)、有意差は2年時点でも維持された(21.0kg vs. 8.8kg、同12.0kg、10.6~13.4kg、P<0.001)。

 体重減少率で見た場合も、1年時点(24.4% vs. 12.8%、平均差11.6%、95%CI 10.8%~12.4%、P<0.001)、2年時点(22.4% vs. 9.4%、同13.0%、11.6%~14.5%、P<0.001)ともに切除群で有意に効果が大きかった。

糖尿病の新規発症が40%減少、2年寛解維持率が上昇

 中央値で5.1年の追跡期間中に、切除群では対照群と比べて糖尿病治療薬の新規使用開始リスクが有意に40%低く〔1万人・年当たりイベント数59.7 vs. 100.4、ハザード比(HR)0.60、95%CI 0.39~0.92、P=0.02〕、糖尿病治療薬の使用による2年間の寛解維持率が有意に高かった(48.4% vs. 22.0%、リスク差26.4%、95%CI 11.7%~41.0%、P<0.001)。

 一方、切除群では対照群と比べて物質使用障害(1万人・年当たりイベント数94 vs. 50、HR 1.86、95%CI 1.30~2.67、P<0.001)、自傷(同45 vs. 25、1.81、1.09~3.01、P=0.02)のリスクがいずれも有意に8割以上高かった。物質使用障害の大部分はアルコール使用障害だった(同69 vs. 30、2.24、1.45~3.48、P<0.001)。

 主要心血管イベント(MACE)発生率(1万人・年当たりイベント数23.4 vs. 24.8、HR 0.96、95%CI 0.49~1.91、P=0.92)、全死亡率(同9.6 vs. 11.8、0.87、0.34~2.23、P=0.76)に有意差は認められなかった。

 以上を踏まえ、Stenberg氏らは「スリーブ状胃切除術は、代謝性合併症を有する1度肥満の患者に対する治療選択肢になりうることが示された。ただし、慎重な術前評価や危険因子の最適化、術後の緊密な支援が必要であり、これらは特に物質使用障害や自傷を含む精神疾患の合併リスクが高い患者において重要である」と結論している。

(太田敦子)