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 寿命のバイオマーカーともいわれるテロメア長とアルコール摂取との関連については明らかでない。英・University of OxfordのAnya Topiwala氏らは、UK Biobankのデータを用いてアルコール摂取量とテロメア長との関連を検討し、結果をMol Psychiatry2022年7月26日オンライン版)に報告した。

24万5,000例超のデータをMR解析

 染色体の末端にあるDNAとテロメア結合蛋白質の複合体であるテロメアは、細胞分裂により徐々に短縮する。テロメア長はアルツハイマー病やがん、冠動脈疾患など老化と関連する疾患との関連が報告されている。しかし、アルコール摂取との関連については、全く関係がないとする大規模観察研究(PLoS Genet 2014; 10: e1004191)がある一方、小規模観察研究ではアルコールの大量摂取とテロメア長の短縮に負の相関が報告されている(Psychopharmacology 2019; 236: 3245-3255)。

 そこでTopiwala氏らは、2006〜10年に40〜69歳でUK Biobankに登録された24万5,000例超のデータを用いて、メンデルランダム化(MR)解析を実施、アルコール摂取とテロメア長との関連を検討した。アルコール摂取量は自己申告に基づき、非飲酒群8,240例(平均年齢59.1歳、女性73.3%)、飲酒歴あり群9,393例(同57.4歳、54.4%)、飲酒群22万7,721例(同56.6歳、48.1%)に分けた。

 エタノール換算8g(米国の場合10g)を1杯とし、1週間当たりの摂取量で飲酒群を五分位(6杯未満群・4万2,279例、6〜11杯未満群・4万3,536例、11〜17杯未満群・4万6,237例、17〜29杯未満群・4万8,291例、29杯以上群・4万7,378例)に分類。国際疾病分類によりアルコール使用障害(AUD)と判定されたのは1,301例だった。テロメア長は、血液データから白血球テロメア長(LTL)を測定した。

週29杯以上のアルコール摂取でテロメア長が有意に短縮

 1週間当たりのアルコール摂取量が最も少ない6杯未満群に比べ、最も多い29杯以上群ではLTLが有意に短縮していた(β=−0.05、95%CI −0.06〜−0.03、P=2.36×10-11)。これは1〜2年分のテロメア長短縮に相当するという。なお、男女別の解析でも結果はほぼ同様であった。一方、非飲酒群と飲酒歴あり群の比較ではLTL短縮との有意な関連は示されなかった。

 MR解析の結果、アルコール摂取とLTLの短縮に有意な関連が示された(逆分散β=−0.07、95%CI −0.14〜−0.01、P=0.003)。特にAUDと判定された者ではLTLの有意な短縮との関連が最も強かった(同−0.06、−0.01〜−0.02、P=0.001)。さらに、アルコール摂取により最も影響を受ける遺伝子多型は、アルコール代謝遺伝子であるアルコールデヒドロゲナーゼ1B(AD1HB)のRs1229984であった。

 以上から、Topiwala氏らは「アルコール摂取とテロメア長短縮との関連が示唆された」と結論。「テロメア長に影響を及ぼしうるアルコール摂取量の閾値を求める必要がある。アルコールの摂取量こそが重要で、量を減らすことでベネフィットがもたらされるだろう」とコメントしている。

松浦庸夫