英・University of GlasgowのPeter Hanlon氏らは、UK Biobankに登録された40~70歳の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者3,000例超を対象に、フレイルの有病率および有害転帰との関連を検討し、結果をBMJ Open Respir Res(2022; 9: e001314)に発表した。フレイルと判定された割合は17%で、フレイルは全死亡、主要心血管イベント(MACE)、全入院、COPD増悪による入院、入院に至らないCOPD増悪のリスク上昇と関連していた。フレイルの検査や研究は65歳以上を対象に行われることが多いが、同氏らは「フレイルは中年層のCOPD患者でも有病率が高く、臨床的に重要な意味を持つ。検査対象は65歳以上に限定すべきでない」としている。
28%が中等度、4%が重度フレイル
解析対象は、2006~10年にUK Biobankに登録された40~70歳のCOPD患者3,131例(平均年齢61.9歳、男性54.9%)。追跡8年間におけるフレイルの有病率を算出し、追跡8年間における全死亡、MACE、全入院、COPD増悪による入院、入院に至らないCOPD増悪とフレイルとの関連を検討した。
フレイルの判定にはFriedらの表現型モデル(Frailty Phenotype)およびWilliamsらの評価指数(Frailty Index)の2種類の指標を用いた。
Frailty Phenotypeでは、握力低下、体重減少、歩行速度低下、疲労、身体活動度低下の5項目のうち、該当項目なしをロバスト(健常)、1~2項目該当をプレフレイル、3項目以上該当をフレイルと判定した。
Frailty Index(スコア範囲0~1)では、スコア0~0.12をロバスト(健常)、0.12~0.24を軽度、0.24~0.36を中等度、0.36超を重度のフレイルと判定した。
解析の結果、いずれの指標でもフレイルの有病率は高かった。Frailty Phenotypeでは17%がフレイルと判定され、Frailty Indexでは28%が中等度、4%が重度のフレイルと判定された。
COPDの重症度(気流制限)とフレイルの関連を検討したところ、1秒率(FEV1%)低下とFrailty Phenotypeに基づくフレイルとの関連が認められたが、Frailty Indexに基づくフレイルとの関連は認められなかった。
気流制限と関係なく死亡・入院リスクに関連
FEV1%を調整後の解析で、Frailty Phenotypeに基づくフレイルは全死亡〔ロバストに対するハザード比(HR)2.33、95%CI 1.84~2.96)、MACE(同2.73、1.66~4.49)、全入院〔ロバストに対する発生率比(IRR)3.39、95%CI 2.77~4.14)、COPD増悪による入院(同5.19、3.80~7.09)、入院に至らないCOPD増悪(同2.15、1.81~2.54)の各リスク上昇に関連していた。
同様に、Frailty Indexに基づく重度フレイルは全死亡(ロバストに対するHR 2.65、95%CI 1.75~4.02)、MACE(同6.76、2.68~17.04)、全入院(ロバストに対するIRR 3.69、95%CI 2.52~5.42)、COPD増悪による入院(同4.26、2.37~7.68)、入院に至らないCOPD増悪(同2.39、1.74~3.28)のリスク上昇に関連していた。
これらの関連性はFEV1%の調整前後で一貫して認められ、気流制限の重症度とは無関係であることが示された。
以上を踏まえ、Hanlon氏らは「フレイルの検査対象は65歳以上に限定される傾向があるが、今回の結果から65歳未満のCOPD患者でもフレイルの有病率は高く、有害転帰と関連することが示された。COPD患者に対するフレイルの検査は、リスクの層別化や介入効果が期待できる集団の特定に有用な可能性があり、65歳以上に限定すべきでない」と結論している。
(太田敦子)