双極性障害を抱える女性において、妊娠や出産は再発リスクを高めるとされるが、詳細は明らかでない。スペイン・Hospital General Universitario Gregorio MarañónのJavier Conejo-Galindo氏らはシステマチックレビューを実施し、双極性障害患者の産後再発率などを検討。結果をJ Clin Med(2022; 11: 3979)に報告した。
16報・約4,000例をレビュー
躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害患者では、妊娠や出産が心身に及ぼす影響は大きく、再発リスクが高まるとされる。しかし、再発リスクが過小評価されることで、予防やケアが遅れる懸念がある上、第二子以降の妊娠に踏み切れないケースも多いという。そこでConejo-Galindo氏らは、双極性障害の女性患者における産後再発率などを検討するシステマチックレビューを実施した。
対象は、2022年1月7日までにPubMed、PsyINFO、web of Scinceに掲載された、双極性障害患者における出産が及ぼす影響を検討した英語論文から抽出した16報・3,977例。レビューおよびメタ解析、併存疾患と区別していない研究、米国精神医学会の『精神疾患の分類と診断の手引き第4版(DSM-Ⅳ)』または国際疾病分類第10版(ICD-10)による診断基準が満たされていない患者を対象とした研究などは除外した。
産後の再発リスクは37%
16報の内訳は、後ろ向き研究10報、前向き研究5報、単盲検試験1報。対象の年齢層は18〜44歳(平均年齢26.30歳)、分娩件数は6,064件だった。病型は、躁状態とうつ状態を繰り返す双極Ⅰ型障害が69.83%。産後の再発率は36.77%であった。
双極性障害の産後再発リスクと社会的要因との関連については認められなかったが、より若年での出産や、児の人数が少ないこと、高学歴との関連を示す研究が1報ずつあった。一方、大半の論文では再発リスクが高頻度に見られる因子として、平均年齢未満での双極性障害発症、より長い罹病期間、前回のエピソード発現時の苦しさ、双極性障害の家族歴、妊娠前の精神科病棟への入院歴などが挙げられた。さらに、前回のエピソード発現が妊娠中または妊娠初期である論文が複数見られたことから、Conejo-Galindo氏らは周産期の再発予防策が重要との見解を示している。
以上から、Conejo-Galindo氏らは「16報・6,064件の分娩を対象としたシステマチックレビューにより、双極性障害の女性患者における産後の再発リスクは36.77%と高いことが分かった」と結論。今回の知見を基に作成した危険リスク因子の概念モデルを提唱しつつ、さらなる研究による潜在的因子の検討が必要と付言している。
(松浦庸夫)