RAS野生型の転移性大腸がん(mCRC)に対し、抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体の投与は生存便益の見込める治療法であるが、ほぼ確実に抵抗性が出現するという問題がある。最近、こうした患者群に対する抗EGFR抗体の再投与(リチャレンジ)が検討されている(関連記事「大腸癌治療ガイドライン改訂、何が変わった?」)。イタリア・Università degli Studi di MilanoのAndrea Sartore-Bianchi氏らは、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の分子選択を基に、抗EGFR抗体パニツムマブ単剤でのリチャレンジ療法の有効性を探索する第Ⅱ相試験を実施。効果がないと想定される患者への治療を回避し、高い効果が得られたことをNat Med2022年8月1日オンライン版)に報告した。

リキッドバイオプシーによるctDNAの遺伝子変異の判定を前向きに検討

 切除不能mCRCに対し抗EGFR抗体が著効後に不応となった患者では、KRASNRASEGFRの細胞外ドメイン(ECD)の獲得変異が約40%に見られる。また、再発の分子学的背景は患者にごとに異なることから、体系的な組織生検や標的治療は困難である。そのため、後方ラインの治療では有効性に乏しく毒性の強い標準治療または抗血管新生薬治療を選択せざるをえなかった。

 一方、抗EGFR抗体中止後に腫瘍が再度感受性を取り戻すことが示唆されており、抗EGFR抗体を再投与するリチャレンジ療法が試みられているが、リチャレンジの適応となる患者の選択方法として、リキッドバイオプシーによるctDNAの遺伝子変異の判定が前向きに検討されたことはなかった。そこでSartore-Bianchi氏らは、ctDNAモニタリングよる分子選択に基づくパニツムマブのリチャレンジ療法の有効性を探索する、非盲検単群第Ⅱ相試験CHRONOSを実施した。

 対象は、全身状態(PS)2以下でRASBRAF野生型の切除不能大腸がんと組織学的に診断され、抗EGFR抗体を含む前治療で部分奏効(PR)以上が得られたが、その後に不応性となったため同クラス薬を含まない治療を受け進行を来したmCRC患者。リキッドバイオプシーによるctDNA検査を行い、RASBRAFEGFR野生型と診断された症例に対し、パニツムマブ単剤療法(6mg/kg、2週間ごと)によるリチャレンジ療法を進行するまで施行した。

 主要評価項目は客観的奏効率(ORR)とし、副次評価項目は無増悪生存(PFS)、全生存(OS)、有害事象とした。

単剤でのリチャレンジとして有望な結果

 52例にctDNA検査を実施し、RASBRAFEGFR野生型野生型と判定された36例のうち適格基準を満たした27例を登録。患者の年齢中央値は64歳(範囲42~80歳)、前治療ライン数中央値は3ライン(同2〜6ライン)、前治療で使用した抗EGFR抗体はパニツムマブ、セツキシマブ、両剤がそれぞれ55%、41%、4%、原発巣の腫瘍占拠部位は右側、左側、直腸が18%、63%、18%だった。

 検討の結果、主要評価項目のORRは30%(95%CI 12~47%)で(PR 8例)、病勢制御率は63%(同41~78%)だった。Sartore-Bianchi氏らは「前治療の中央値が3ラインの患者群において、パニツムマブ単剤でこれだけの効果が得られたことは注目に値し、標準的な三次治療と比べ優れている」と指摘している。

 PFSとOSは、それぞれ中央値16週と55週だった。忍容性は全体的に良好で、副作用は管理可能なものであり有害事象による治療中止はなかった。

 同氏らは「ctDNA検査はパニツムマブ単剤でのリチャレンジ療法を施行するmCRC患者の選択に安全かつ簡便に使用でき、薬剤の毒性を緩和しつつ治療効果を最大限に高めることができる効果的な方法である」と結論。「これらの患者群で、大規模ランダム化比較試験により同療法と標準療法を比較する必要がある」と付言している。

(小路浩史)