代替塩の使用は、全死亡リスク、心血管(CV)死リスク、CVイベントリスクの低下に関連する。中国・Beijing University of Chinese MedicineのXuejun Yin氏らは、代替塩のCVリスクへの低減効果に関する国際ランダム化比較試験(RCT)21件のシステマチックレビューとメタ解析を実施。代替塩で全死亡リスクが11%低下したとの結果をHeart(2022年8月9日オンライン版)に報告した。
SBPは4.61mmHg、DBPは1.61mmHg低下
昨年(2021年)報告されたSalt Substitute and Stroke Study(SSaSS)では、中国の脳卒中の高リスク集団を対象に、代替塩使用がCVイベントに及ぼす影響が検証され、脳卒中の有意な抑制効果が示された(N Engl J Med 2021; 385: 1067-1077、関連記事「代替塩で脳卒中が有意に抑制」)。しかし、他の集団でも同様の効果が認められるかどうかは明らかでない。そこでYin氏らは国際RCTのシステマチックレビューとメタ解析を実施し、中国以外の地域における代替塩のCVリスク低減に対する効果を検証した。
2021年8月31日までにPubMed、 Embase、Cochraneデータベースに登録された文献から、salt substitute、 low-sodium salt、reduced-sodium salt 、potassium saltをキーワードに論文を検索。欧州、西太平洋地域、米国、東南アジアで実施された、代替塩の血圧、CVリスク、早期死亡に及ぼす影響に関する3万1,949人を含む国際RCT 21件を抽出した。試験期間は1カ月~5年。代替塩が含有する塩化ナトリウムの割合は33~75%、カリウムの割合は25~65%だった。
代替塩の血圧に及ぼす影響を検討した論文は2万9,528人を含む19件。解析の結果、代替塩によって収縮期血圧(SBP)は平均4.61mmHg低下(95%CI -6.07~-3.14mmHg、P<0.001、I2=76.8)、拡張期血圧(DBP)は平均1.61mmHg低下した(同-2.42 ~-0.79mmHg、P<0.001、I2=73.0)。地域や年齢、性、高血圧歴、BMI、ベースライン時の血圧、24時間尿中ナトリウム、24時間尿中カリウムで定義したサブグループでも、代替塩による降圧効果は一定であった(均一性のP>0.05)。メタ回帰分析の結果、代替塩中の塩化ナトリウムが10%低下するごとに、SBPは1.53mmHg低下(95%CI -3.02~-0.03mmHg、P=0.045)、DBPは0.95mmHg低下した(同-1.78~-0.12mmHg、P=0.025)。
CV死リスクは13%、MACEリスクは11%低下
代替塩の全死亡に及ぼす影響を検討した論文は2万4,306人を含む5件。メタ解析の結果、代替塩により全死亡リスクは11%低下した〔リスク比(RR)0.89 、95%CI 0.85~0.94、 P<0.001〕。
代替塩のCV死に及ぼす影響を検討した論文は2万3,416人を含む3件。代替塩によりCV死リスクが13%低下した(RR 0.87、95%CI 0.81~0.94、 P<0.001)。
代替塩の主要CVイベント(MACE:非致死的脳卒中、非致死的急性冠症候群、血管死の複合)に及ぼす影響を検討した論文は2万1,603人を含む2件。メタ解析の結果、代替塩によりMACEリスクが11%低下した(RR 0.89、95%CI 0.85~0.94、 P<0.001)。
代替塩の尿中電解質に及ぼす影響を検討した論文は2万7,934人を含む13件。メタ解析の結果、代替塩により尿中ナトリウム排泄量は平均0.48g/日減少し(95%CI -0.82~-0.15g/日、P<0.001、 I2=78.8)、尿中カリウム排泄量は平均0.45g/日増加した(95%CI 0.25~0.65g/日、P<0.001、 I2=91.7)。
サブグループ解析の結果、代替塩中の塩化カリウムの割合が大きいほど尿中ナトリウム排泄量が増加することが示された(P=0.04)。またメタ回帰分析では、年齢が10歳増加するごとに代替塩による尿中ナトリウム排泄量が平均0.45g/日減少した(95%CI-0.78 ~-0.12 g/日、P=0.008)。
代替塩の尿中カリウム排泄量に及ぼす影響は地域によって異なり(P=0.02)、効果は欧州で最大、東南アジア地域で最低だった。サブグループ解析の結果、男性の割合が大きいほど尿中カリウム排泄量が増加(P=0.05)。メタ回帰分析の結果、男性の割合が10%増加するごとに代替塩による尿中カリウム排泄量は0.29g/日増加した(95%CI 0.05~0.53g/日、P=0.016)。
以上から、Yin氏らは「代替塩による降圧効果は地域、集団を超えて認められた。代替塩の血圧を介した臨床アウトカムに対する保護効果はサブグループ集団および世界の国々に一般化できる可能性がある」と結論した。
(大江 円)