英・University of NottinghamのEdoardo Cipolletta氏らは、痛風患者約6万人を対象とした後ろ向き観察研究で、痛風発作後に心血管疾患のリスクが一過性に上昇するかどうかを検証。その結果、心血管疾患を発症した患者は、発症していない患者と比べて発症の120日前までに痛風発作を起こしている割合が有意に高く、痛風発作は心血管疾患の増加と関連していることが明らかになったと、JAMA2022; 328: 440-450)に報告した。

痛風は炎症を引き起こし、痛風患者は心疾患を有する割合が高い

 炎症は心血管疾患の重要な危険因子である。痛風は、炎症性サイトカインや活性酸素の濃度上昇、好中球細胞外トラップの形成、血管内皮機能障害、アテローム血栓症を促進する血小板機能亢進を伴う軽度炎症を引き起こし、痛風患者は心疾患を有する割合が高いことが知られている。

 そこでCipolletta氏らは、痛風発作が心血管疾患(急性心筋梗塞および脳卒中)の発症リスクの一過性の上昇と関連するかを検討する後ろ向き観察研究を実施。1997年1月1日~2020年12月31日に英国の一般診療所データベースClinical Practice Research Datalinkに登録された18歳以上の痛風患者6万2,574例(平均年齢76.5歳、男性69.3%、女性30.7%)を抽出。そのうち、痛風の診断後に心血管疾患を発症した症例群1万475例と発症していない対照群5万2,099例をマッチングしてコホート内症例対照研究を行った。また、痛風発作と心血管疾患を有する1,421例を対象に自己対照症例集積研究を実施した。

 コホート内症例対照研究では、対象を心血管疾患の有無および指標日の0〜60日前、61〜120日前、121〜180日前、180日前以前の痛風発作の有無で分類。ロジスティック回帰分析によって、痛風発作の既往と心血管疾患との関連を評価した。

 自己対照症例集積研究では、曝露期間を痛風発作後180日間とし、60日ずつ3分割した。痛風発作前の30日を導入期間とし、対照期間は痛風発作の31〜180日前および曝露期間以後の360日間とした。心血管疾患の数を条件としたポアソン回帰モデルを用いて、年齢、季節を調整後、対照期間に対する曝露期間の調整発生率比(aIRR)を算出した。

 主要評価項目は、心血管疾患(急性心筋梗塞または脳卒中)とした。

心血管疾患のリスクは痛風発作後0~60日で1.89倍、61~120日で1.64倍

 解析の結果、心血管疾患の発症と0~60日前〔症例群1万475例中204例(2.0%)vs. 対照群5万2,099例中743例(1.4%)、心血管疾患の調整オッズ比(aOR) 1.93、95%CI 1.57〜2.38〕と61~120日前〔同1万475例中170例(1.6%) vs. 5万2,099例中628例(1.2%)、1.57、1.26〜1.96〕における痛風発作との有意な関連が認められた。一方、121~180日前の痛風発作との関連はなかった〔同1万475例中148例(1.4%) vs. 5万2,099例中662例(1.3%)、1.06、0.84〜1.34〕。

 自己対照症例集積研究では、1,000人・日当たりの心血管疾患発症率は、対照期間(痛風発作31〜180日前または痛風発作後181〜540日)の1.32(95%CI 1.23〜1.41)に対して、痛風発作後0~60日では2.49(95%CI 2.16~2.82)、61~120日では2.16(95%CI 1.85~2.47)、121〜180日では1.70(95%CI 95% CI 1.42〜1.98)だった。

 対照期間に対する曝露期間のaIRRは、痛風発作後0~60日で1.89(同1.54~2.30)、61~120日で1.64(同1.45〜1.86)、121~180日で1.29(同1.02〜1.64)と、いずれも有意に高かった。

 以上から、Cipolletta氏らは「心血管疾患を経験した痛風患者はそうでない痛風患者に比べて、発症の120日前までに痛風発作を起こす割合が有意に多かった」と結論。心血管疾患と痛風発作との関連性については、「痛風発作では、NLRP3インフラマソームの活性化によって好中球が増加し急性炎症が起こる。活性化したプラーク内の炎症細胞はメタロプロテアーゼやペプチダーゼなどの宿主応答蛋白質を増加させ、酸化ストレスを亢進させる。これらがプラークの不安定化に寄与しているのではないか」と説明している。

(今手麻衣)