米・Boston UniversityのLeonardo Martinez氏らは、新生児へのBCGワクチン接種による結核の発症予防効果に関する論文26報・6万8,000例超のシステマチックレビューとメタ解析を実施。5歳未満児ではワクチンによる有意な結核発症予防効果が認められたものの、5歳以降は有意差が消失したとの結果をLancet Global health2022; 10: E1307-E1316)に報告した。

年齢別の予防効果を検討

 BCGワクチンの歴史は古く、ワクチン接種が普及しているにもかかわらず、結核に対する発症予防や死亡抑制などの効果、乳幼児期に接種後の免疫持続期間についてはいまだ不明な点がある。

 Martinez氏らは今回、乳幼児期のBCGワクチン接種が結核発症および死亡に及ぼす影響を年齢別に検討する目的でシステマチックレビューとメタ解析を行った。

 1998年1月1日~2018年4月7日にMEDLINE、Web of Science、BIOSIS、EMBASEに登録された論文を、「mycobacterium tuberculosis」「TB」「tuberculosis」「contact」をキーワードとして検索し、BCG接種に関するデータがない、または出生時のBCG接種を推奨していない国(オランダ、オーストラリア、カナダ、ドイツ、スペイン、米国)の研究を除外した17カ国におけるコホート研究26報・6万8,552例(ワクチン接種者4万9,686例、非接種者1万8,866例)を抽出。主要評価項目として結核接触者における結核有病率(ベースライン時または90日以内に診断)および発症率(診断時またはベースラインから90日以内)の複合を、副次評価項目として肺結核、肺外結核、死亡率を解析した。

5歳未満で発症リスク低下と有意に関連

 結核を発症したのは1,782例〔ワクチン接種者1,309例、非接種者473例〕で、ワクチン接種とリスク低下に有意な関連が認められた〔ベースライン時の年齢、性、結核の既往などを調整後オッズ比(aOR)0.82、95%CI 0.74~0.91〕。

 接触者の年齢で層別化し結核感染を検討したところ、ワクチン接種による有意な結核(肺および肺外結核)リスク低下が認められたのは5歳未満(aOR 0.63、95%CI 0.49~0.81)のみだった(5~9歳:同0.76、0.51~1.14、10~14歳:同0.99、0.66~1.48、15~24歳:同1.32、0.98~1.75、25~34歳:同1.17、0.83~1.64、35歳以上:同0.84、0.67~1.06)。

 ツベルクリン反応陽性例またはインターフェロン(IFN)-γ陽性例におけるワクチン接種による予防効果は、5歳未満(aOR 0.68、95%CI 0.47~0.97)、5~9歳(同0.62、0.38~0.99)でのみ認められた。また陰性例においても、5歳未満(同0.54、0.32~0.90)のみでリスク低下との関連が示された。

有意な死亡抑制効果は14歳まで

 肺または肺外結核を報告している14報・5万7,421例を対象に、ワクチン接種による発症予防効果を解析した。その結果、肺結核の有意なリスク低下との関連が示された(aOR 0.81、95%CI 0.70~0.94)のに対し、肺外結核との関連はなかった(同0.96、0.65~1.41)。

 さらに死亡率のデータを有する4報を解析。14歳まではワクチン接種による有意な死亡リスク低下が認められたものの、15歳以上では有意差が消失した(aOR 1.13、95%CI 0.35~3.68)。

 以上の結果を踏まえ、Martinez氏らは「今回の知見は、BCGワクチン接種は幼児期の結核予防には有効だが、その効果は青年期以降は消失することを示唆している。したがって、高齢者集団では免疫を強化する必要がある」と述べている。

(田上玲子)